研究課題/領域番号 |
18K02501
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
浅野 俊和 中部大学, 現代教育学部, 教授 (00300351)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 全日本保育聯盟 / 西村眞琴 / 大阪毎日新聞社会事業団 |
研究実績の概要 |
本研究は、保育・幼児教育史で最も研究が遅れている「総力戦体制」下に焦点を当て、復刻版未刊行の雑誌『保育』(1937(昭和12)年4月創刊、1945(昭和20)年2月終刊、「全日本保育聯盟」編輯・発行、戦後復刊後分(日本図書センターから復刻版が刊行中)は除く)の誌面に関する調査・分析を進める一方、他誌との比較・検討も行うことを通して、その当時における女性専門職の〈技術的動員〉の内実へと迫るものである。こうした研究目的を達成するため、2年目(2019(平成31・令和元)年度)には、誌面調査と文献収集などを前年度に引き続いて行い、研究成果の中間報告をした。 前者については、大阪府立中央図書館他に所蔵された原本、国立国会図書館のデジタルコレクションで公開されている電子データに基づき、誌面調査と文献収集を進めた。一方、後者に関しては、2019(令和元)年9月8日、日本ペスタロッチー・フレーベル学会第37回大会(於・福岡大学)において、口頭発表「倉橋惣三のナショナリズム――総力戦体制下における『国民幼稚園』論のポリティクス」も行っている。また、論文「総力戦体制下の雑誌『保育』における『母親教育』記事―― 創刊当初の『家庭保育 ちごちご草』欄を中心に」(『中部大学現代教育学部紀要』第12号、2020年3月)を執筆・投稿した。その論文では、同誌の誌面づくりに迫る第一歩として、目次上で括られた母親向け特設ページである「家庭保育 ちごちご草」欄(第4号(1937年7月号)から第8号(同年11月号)まで)に焦点を絞り、編輯内容について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、1937(昭和12)年4月創刊、1945(昭和20)年2月終刊という、まさに「総力戦体制」と歩んだ雑誌『保育』(「全日本保育聯盟」編輯・発行)を取りあげて、同誌が保姆・女教師ら女性専門職の〈技術的動員〉をどのように謳い、どういった実践などを推奨したのかへと迫ることにある。その目的の達成に向け、2年目となる2019(平成31・令和元)年度)も、同誌の所蔵館(大阪府立中央図書館・国立国会図書館など)で誌面の調査と主要記事・論稿・広告の複写を行った。一方、同時期に刊行されていた『幼児の教育』誌との比較による検証も行うため、同誌で倉橋惣三が展開した一連の「国民保育」論を取りあげ、口頭発表「倉橋惣三のナショナリズム――総力戦体制下における『国民幼稚園』論のポリティクス」(日本ペスタロッチー・フレーベル学会第37回大会、於・福岡大学、2019年9月8日)という形で、研究成果の中間報告の公表も行っている。また、「全日本保育聯盟」の発足・展開といった背景、その当時における保育界・社会事業界の状況や同聯盟の創立母体「大阪毎日新聞社会事業団」との関わりなどを踏まえつつ、初期の『保育』誌の母親指導記事を検討した論文「総力戦体制下の雑誌『保育』における『母親教育』記事―― 創刊当初の『家庭保育 ちごちご草』欄を中心に」(『中部大学現代教育学部紀要』第12号、2020年3月)もまとめた。それらは、当初計画した全3段階の第2段階に当たるものであるけれど、資料収集及び内容の分析に若干の遅れが見られはじめている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目(2020(令和2)年度)は、前年度までの調査・資料収集作業を継続するとともに、これまでの成果を踏まえ、誌面の分析・検討や他誌との比較・検証などを進めて、総力戦体制下における女性専門職の〈技術的動員〉が内包する歴史的特質の抽出を試み、研究成果の最終報告も続けて行う予定となっている。具体的には、2年目(2019(平成31・令和元)年度)でやり残した作業に継続して取り組んでいく一方、調査結果に基づいて、『保育』誌に掲載された論稿・記事・広告などを分析し、「全日本保育聯盟」による編輯のもとで形成・展開された保姆ら専門職の〈技術的動員〉の過程や内実を検討する。また、そうした成果を踏まえながら、同時期に刊行されていた『幼児の教育』誌や『子供の世紀』誌、『保育問題研究』誌などとの比較による検証も行い、総力戦体制下における女性専門職の〈技術的動員〉が内包する歴史的特質の抽出を試みる。さらに、その研究成果の報告に関する公表も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた図書が附属図書館に所蔵されていたこと、そして図書の値引きが得られたことにより、未使用額が生じた。また、新型コロナウイルスの影響により、年度末に計画していた東京・大阪の大学図書館・国公立図書館・資料館などへの調査出張が不可能となったため、旅費も繰越すこととなった。そのように、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したこと、新型コロナウイルス流行を受けての移動自粛という突発的な出来事が発生したことにより、当初の見込み額と執行額が異なったため、2020(令和2)年度については研究計画の修正・調整を行う形で、前年度未使用の研究費も含めて、新たな図書購入と調査出張、研究成果の公表などを行っていく。
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