研究課題/領域番号 |
18K02505
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
畑 忠善 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (70267954)
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研究分担者 |
宮田 昌史 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (00387721)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳幼児の発達 / 心臓自律神経活動 / 心電図 / 心筋再分極特性値 |
研究実績の概要 |
背景と目的:早産児は同じ生後年齢の正期産児に比較して乳児期に心拍変動の低下を認め,心臓自律神経制御の発達遅延が推測されている.また心筋再分極に異常が生ずれば乳幼児突然死症候群の一因となる可能性が示唆されているが,いまだ自律神経発達と心筋再分極の関係についての研究は少ない. 対象と方法:生後1か月の健常な乳児を対象に,心筋再分極変動比率のVariability Ratio (VR)と周産期プロフィールの関係を検証することにある.大学病院で出生し,生後1か月時の心電図記録を行なえた心疾患を有さない208名(男女比124/84,平均在胎週数38.4±1.5)を対象に用い,在胎週数37週未満の早産児27名と,その他181名(平均在胎週数38.8±1.1)を対照群に分類して比較検討を行なった.心電図記録は生体ポリグラフ記録装置 を用いてCM5誘導を記録した. Variability Ratio Formula (VR-Ⅰ: SDQT/SDNN, VR-Ⅱ : SDQT/rMSSD, VR-Ⅲ : SDQTc/ SDNN, VR-Ⅳ : SDQTc/rMSSD)を用いてVR(Ⅰ-Ⅳ)を算出した. 研究結果:結果として全体ではVR(Ⅰ-Ⅳ)と在胎週数は緩やかな負の関係を示し,VR(Ⅰ-Ⅳ)値は早産群と対照群の2群間に明らかな有意差を認めた.一方,出生体重とVR(Ⅰ-Ⅳ)は相関性を示さなかった. まとめ:対象児童においてVR(Ⅰ-Ⅳ)値は在胎週数と緩やかな負の関係を示した.生後1か月の乳児においてVR値は早産児童を識別する事が可能であることを明示した. 本研究論文は2020年Fujita Medical Journalに掲載され,並行研究も2018年Pediatric Cardiologyに掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常児童における心臓自律神経活動と心筋再分極特性(Variability ratio:VR)の相関性について検討を重ね,英論文として受理された. 現在、多面的な切り口で心筋再分極特性を評価している.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの検討は健常児童を対象に行い、子供たちの健やかな発育は心臓電気生理学的な分析手法である心筋再分極特性値(QT variability index)に反映される仮説を検証した. 一方,これまでにある種の病態を有する患児において心筋再分極特性値を算出し病態との関係を評価してきた.全身性炎症疾患では、発熱(体温)と炎症反応マーカー(CRP)は心筋再分極特性値と正の相関性を示し、その機序は自律神経緊張ではなく炎症に伴う再分極の変調が主因であることを明示してきた。また先天性心疾患児童においては,心内での左右短絡による肺血流量の増加が心筋再分極特性値と正の相関性を示すことを提示し,心房中隔欠損症と心室中隔欠損症では異なった機序より心筋再分極特性値を増大させることを示した. 多くの子供達の心電図を解析し,限られた病態群では時系列から重症度を比較し評価する事が可能であると実証してきた.今後は病態の発症または増悪を心筋再分極特性値から読み取り,予防的な治療介入に役立てる臨床的検討を進めなくては医療現場へのフィードバックは得られない. 現在,NICUにおいてモニター心電図の定期的分析から児童の心筋再分極特性値の変動を読み取ってトレンドグラフと可視化する.限られた数ではあるものの,早産低出生体重児に発症する重篤な晩期循環不全の発症を心筋再分極特性値から予測する臨床的研究を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
心電図記録機器を購入する予定であったが、NICU新生児管理モニター機器の更新の際に、データ移動と変換プログラムが付帯されて納品された。結果、新規の生体信号記録装置を購入する事なくNICUでの心電図記録の解析が可能となった。 今後、NICUの解析データ保存のために独立したハードディスクを準備し、安全に保管管理できるように準備していく予定である。
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