研究課題/領域番号 |
18K02507
|
研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
中出 美代 東海学園大学, 健康栄養学部, 教授 (80352855)
|
研究分担者 |
竹内 日登美 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 短期研究員 (10770620)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 子ども学 / 時間生物学 / 睡眠学 / 生活リズム / 育児ストレス |
研究実績の概要 |
本研究では、幼児と保護者の朝食欠食など夜型化が育児ストレスに与える影響を調査し、「朝食改善の育児ストレスの軽減効果」を検証することを目的とする。2年目に当たる平成31年度(および令和元年度)は、夜型化と育児ストレスの増加に関するエビデンスを得ることを目的に、朝食と生活リズムの影響を受けやすい育児の困りごとの頻度、生活習慣、育児ストレスの強さに関するWeb調査(全国調査1600人)と、留め置き式質問紙調査(1200人)を実施した。その結果、常勤の母親は睡眠時間が短く起床が早く、慢性的な睡眠不足が懸念された。また、就寝時刻の遅さや夜型と育児ストレスの頻度・程度は関連しており、時間のなさ、子育ての知識不足などがストレスを感じる項目の上位に上がった。育児ストレスの高い保護者ほど睡眠衛生が悪く、その保護者の幼児は心身の不調割合が高く、親の育児ストレスと、親子の生活リズム、睡眠習慣には関連が認められた。また、共食や朝食習慣と子どもの不定愁訴、保護者の食意識との関連や、朝食習慣、生活リズム・睡眠習慣と育児における困りごとの関連について検討した。良好な朝食習慣が子どもを朝型にして育児における困りごとを減少させる可能性や,保護者の生活の夜型化と朝食における単品摂取の増加や時刻の不規則さの関連などが明らかになり、幼児の朝食の食育では、規則的な摂取や朝食内容の向上に取り組むとともに,保護者自身の夜型化の是正の必要性が確認できた。これらの研究成果は、学会(第8回日本栄養改善学会東海支部会学術大会、日本睡眠学会第44回定期学術集会、日本生理人類学会第80回大会)と、論文により報告(愛知学泉大学紀要2020)を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度(および令和元年度)は、計画通り、特に朝食と生活リズムの影響を受けやすい育児の困りごとの頻度、生活習慣、育児ストレスの強さの関係の調査を行った。質問票の準備段階では、平成30年度の調査結果を参考に選定した、特に生活習慣の乱れの影響を受けやすい育児の困りごとの頻度を問う質問項目と、幼児と保護者の朝食習慣、概日タイプ度、睡眠習慣など、生活習慣についての項目、更に、保護者の育児ストレスの程度を問う尺度を含む質問紙を作成することができた。その質問紙を用いて、令和元年6月に、Web調査(社会調査会社に委託,全国調査1600人)と留め置き式質問紙調査(1200人)を実施することができた。調査後は、調査結果より、育児の困りごとと朝食習慣、睡眠習慣、生活リズムの関係について明らかにし、複数の学会発表とともに論文投稿も行った。調査から得た結果を基に、介入調査(令和2年度実施)の教材に入れるべき要素の検討も行っており、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度(および令和元年度)の調査結果から、「生活改善、特に、朝食習慣の見直しで育児ストレスを解消する」ための教材を作成する。教材の種類は、親子間での相互作用による生活改善効果が最も高く見込まれる親子で利用する視覚教材(絵本教材・食育ゲームなど)とし、それら教材を用いた介入調査により朝食改善による育児ストレス軽減効果を検証する。具体的には、協力保育・幼稚園に教材を配布し、特に効果が高いと思われる取り組み2項目程度を3週間程度実践してもらう介入調査を実施する。介入調査の朝食の取り組みではなるべく保護者の手間を増やさずに栄養改善を行うため、具体的なメニューや調理法の提示なども行うことを計画している。介入調査の結果、朝食への介入(ゲームや教材による意識づけ)が、親子の生活リズムの改善及び育児ストレスの軽減に寄与したのかを検証する。これらの調査結果から、特に朝食と育児ストレスに関するエビデンスを得て、その成果を、時間生物学会等の学会で報告する。また、平成31年度(および令和元年度)実施の質問紙調査より得られた知見の論文化も行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度(および令和元年度)は、本研究の主調査であるWEB調査を社会調査会社に委託して行った。調査票の作成に当たっては、Web調査の経験のある研究者からノウハウを学び、自力で設計したため、その分費用を節約することができた。留め置き法で行った質問紙調査においては、データ入力作業を行った者のスキルが高く、打ち込み作業が円滑に進んだため、研究補助の人件費を大幅に削減することができた。また、関連学会の地元開催(名古屋)が多かったため、旅費等の支出も抑えられた。削減による残額は、令和2年度に行う介入のための教材の充実や論文投稿に使用する計画である。
|