研究課題/領域番号 |
18K02508
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
鮫島 輝美 京都光華女子大学, 健康科学部, 講師 (60326303)
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研究分担者 |
東村 知子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30432587)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療的ケア児 / 保育ニーズ / 実践事例の検討 / 普及モデル構築 |
研究実績の概要 |
2020年度は、「こどもコミュニティケア」におけるフィールド調査を継続して行った。①組織運営方法、②具体的な支援や③地域連携についてのアクションリサーチに加えて、スタッフや保護者へのインタビューを実施した。これまでの実践活動をエスノグラフィーとして描く振り返り作業を通じて、実践の特徴がどのようなものとして位置づけられるかを考察した。保育の特徴として、一人一人への丁寧な関わりと共生保育、特徴的な家庭支援、が挙げられた。また、「分けない」実践が,医療的ケア児の保育を可能にする上で重要な役割を果たしていることを見出した。この「分けない」という特徴には,病気や障がいの子どもと他の子どもたちを分けない,園で働くスタッフを職種や働き方によって区別しない,自分たちの業務を限定しない,という三つの側面があった。また,そのような実践は,異なる施設の経営などの仕組みや,一人ひとりに必要なケアやスタッフの業務を可視化する道具によって支えられていた。保育士が行う行為としての医療的ケアは限定的なものであるが,医療的ケア児と他の子どもたちが一緒に生活し,そこにすべてのスタッフが関わることで,保育士が看護師の実践に周辺的に参加し,医療的ケアに不可欠な役割を担うことが可能になっていた。 さらに、今年度は、医療的ケアが必要な当事者たちと共に、この問題について日本質的心理学会にてパネルディスカッションを行った。当事者たちも様々な現実の中で、そういう子どもたちのための居場所づくりをしており、このような問題を考えていく交流の場が今後も必要であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
③やや遅れている理由としては、研究1-1は概ね順調に進めることができているが、研究1-Ⅱのフィールド調査が十分には進められておらず、さらに2、3月に予定していた調査が全てキャンセルとなり、現在も見通しが立っていないことがあげられる。研究2の言説分析は、進めることができ、フィールドのデータを整理し、論文化することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、フィールド調査の再開がいつできるかが不透明である。そのため、今後の社会状況も鑑みた上で、決定していきたいと考えている。研究1-Ⅰの調査は、可能な部分は継続していく。また、研究1-Ⅱのフィールド調査を、大阪、京都、の施設で行う予定である。今年度の知見を踏まえて、地域のおける専門職連携や医療的ケア児の歴史的背景を調査し,現在何が問題とされているのか,なぜ医療的ケア児の保育は困難あるいは不可能であるとされているのか,政府の資料,先行研究,新聞などの言説分析を行い,医療的ケア児をめぐる社会的障壁が何かを明らかにする。それをまとめる中で、研究3の普及モデルの検討を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の2,3月の出張・調査が中止となったため,残金が生じた.コロナウイルス の影響で外出制限となり,使用目的自体がなくなった.消耗品などに使用するよりも来年度に持ち越し,必要な調査のために使用するために2020年度に繰り越すことに決めた.
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