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2019 年度 実施状況報告書

PTA民主化の思想史研究ー1970-2005年『PTA研究』の分析を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 18K02509
研究機関関西学院大学

研究代表者

桜井 智恵子  関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00300343)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードPTA / 民主化 / リベラリズム
研究実績の概要

研究の成果として、全国PTA問題研究会に初期の1970年代より関わってきた方々やPTA問題の先行研究者のインタビューを行い、『PTA研究』バックナンバーの分析を進めることができた。
1952年に日本父母と先生全国協議会(日本PTA)結成大会が開かれたが、民主的なPTAを志向する市民・保護者からは重視されなかった。PTAは、短期間に天下り的に各学校に作られたこともあり、戦前の保護者会あるいは後援会のような性格が残り、その実権も地域の一部の有力者が握り、学校に干渉したり、教職員の自由を制約する、というような役割をはたした例は少なくなかった。また、PTAの結成には法的な規制がないため、特に1970年代以降の新設の学校では学校運営が面倒になることを恐れ、作らないところもあった。全国PTA問題研究会は民主教育運動の立場から、PTAは教育を受ける権利と子どもの自己決定権を守り推進する立場にあるとした。民主的なPTAを志向する市民・保護者が集結した全国PTA問題研究会は、当時の子どもをめぐる時事問題にも民主教育運動の立場から意見を述べ、子どもの権利論のさきがけになっていたことも判明した。
一方で、民主教育運動には「リベラリズム」の思想が宿っていることが見て取れ、教育を保障することで子どもを守るという志向性がある。この原理的な分析が次年度の課題になる。
現在のPTA問題についても一定把握ができた。全国の新聞記者がボランティアでPTA問題の議論を重ねている「PTAフォーラム」にパネリストとして参加予定であったが、新型コロナウイルスの影響のため延期になった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度の成果として、全国PTA問題研究会に初期の1970年代より関わってきた方々やPTA問題の先行研究者のインタビューを行い、『PTA研究』バックナンバーの分析を進めることができた。
インタビューを通して、1950年代のPTA結成当初、民主的なPTAを志向する市民・保護者からは重視されず、全国PTA問題研究会は民主教育運動の立場から、PTAは教育を受ける権利と子どもの自己決定権を守り推進する立場にあるとしていたことが明らかになった。
全国PTA問題研究会は民主的なPTAをめざす市民や教育関係者に支えられた市民集団であり、首都圏中心の展開であったと考えられるが、その思想の多様性を探るうえでも今年度の研究は意義があり、本研究課題は順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

民主的なPTAを志向する市民・保護者が集結した全国PTA問題研究会は、当時の子どもをめぐる時事問題にも民主教育運動の立場から意見を述べ、子どもの権利論のさきがけになっていたことも判明した。
今後は、これまで行ってきた取材をより深く調査し、それぞれの時代における『PTA研究』をめぐる展開や、学校との関係性などにも目配りして、PTA民主化思想の解明にも力を注ぎたいと思う。
2020年度は最終年度であるので、これまでの2年間の研究を継承しつつ、関係者インタビューを整理し、全国PTA問題研究会という民主教育運動の「リベラリズム」思想に関する原理的な分析を重ね、その特性を明らかにしたい。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
2019年度の研究では、新型コロナウイルスの影響を受け、当初、予定していた現PTA保護者たちへのインタビューなどができなくなり、それに伴う支出が減額となった。
(使用計画)
2020年度は、今年度よりも綿密な史料調査もする予定である。主にインタビュー旅費や史料調査に助成金を使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件)

  • [雑誌論文] 自律的な「主体化」という政治的態度ー学校はいかに関わってきたか2019

    • 著者名/発表者名
      桜井智恵子
    • 雑誌名

      政治的態度のつくられ方の研究

      巻: 「民意」研究委員会報告書 ページ: 16-35

  • [雑誌論文] 資本制社会が求めた道徳教育2019

    • 著者名/発表者名
      桜井智恵子
    • 雑誌名

      唯物論研究

      巻: 149 ページ: 66-73

  • [雑誌論文] 子どもの人権と教師の人権ー対立している場合じゃない2019

    • 著者名/発表者名
      桜井智恵子
    • 雑誌名

      こころの科学

      巻: 特集増刊 ページ: 156-160

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公開日: 2021-01-27  

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