本研究の一つ目の目的は,病棟保育士の専門性を質的研究と量的研究を組み合わせて同定することである(研究Ⅰ)。まず質的研究として,病棟保育士の専門性に関するこれまでの先行研究の知見を集約し,6カテゴリ(子どもに関わる姿勢,医療的知識・技術,他職種連携,発達支援,生活支援,専門職としての責務)48項目からなる専門性項目を選定した。 次に量的研究として,病棟保育士は「保育士のみで従事する者」(以下,非保持者)と「保育士に加え,医療保育専門士やホスピタルプレイスペシャリストといった学会認定資格を所持して従事する者」(以下,保持者)の二層に分かれることを見出し,非保持者が病棟保育士全体の約8割になることを明らかにした。非保持者に限定した専門性研究はなかったため,専門性項目6カテゴリの重視度の傾向,経験年数や雇用形態による比較により,非保持者は「専門職としての責務」に関する職務が課題になっていることが明らかになった。次に,非保持者と保持者の比較からは,両者には医療的な専門性の部分に差異があること,非保持者は,日本医療保育学会の認定資格である医療保育専門士とほぼ同等の専門性の認識を持っていることを明らかにした。 本研究の二つ目の目的は,病棟保育士の養成カリキュラムを開発することである(研究Ⅱ)。研究Ⅰから,養成カリキュラムはこれまでの保育士養成カリキュラムに加え,「医療的知識・技術」や「他職種連携」,「専門職としての責務」に関するカリキュラムを充実させる必要性が示唆された。具体的には,保育対象となる子どもの病気に関する医療的な知識や技術を向上させる講義や演習,病棟保育の価値を見出し,それを保育士以外の職種に伝える力を高める演習,そして,専門職として学び続けていくための自己評価や研究活動の基礎力を身に付ける演習が必要だということが分かった。
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