| 研究課題/領域番号 |
18K02516
|
|---|
| 研究機関 | 国立教育政策研究所 |
|---|
研究代表者 |
掘越 紀香 国立教育政策研究所, 幼児教育研究センター, 総括研究官 (80336247)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| キーワード | 社会情動的スキル / 集中没頭 / 認知的スキル / 幼児期 / 幼小接続期 / 弛緩発散 |
|---|
| 研究実績の概要 |
幼児教育において，保育を捉える視点の1つとして，遊び込む姿，集中没頭する姿が注目されている。幼稚園教育要領等において，育みたい資質・能力として，「学びに向かう力」，社会情動的スキルが着目されており，幼児期や幼小接続期の集中没頭する姿との関連が予測される。本研究では，１）幼児期・幼小接続期の集中没頭等と，幼児の要因（社会情動的スキル，認知的スキル，生活スキル）との関連について，縦断的に検討することを目的としている。
令和2年度は3年目であったが，コロナ禍による調査の中断や新規調査の再検討・延期のうえで，以下の調査を実施した。
１）3歳児から縦断的に観察してきた5歳児について，月1回程度（緊急事態宣言の時期を除く）保育観察を実施した。3歳児から5歳児の集中没頭等の事例を抽出し，分類項目（①年齢・時期 ②人数・仲間との状態 ③場所 ④行動 ⑤遊び場面 ⑥持続 ⑦音/声・やりとり ⑧保育者の援助）に沿って整理して，分析を進めた。観察から，3，4歳児に比べて5歳児では，工夫や試行錯誤の内容が高まり，自ら計画したり，説明して進めたり，複数の友達と話し合ったりする姿が見られた。静かに集中没頭する際も，時々友達と見せ合い説明して取り組んだり，細かな作業に疲れても気分転換して継続し完成させたりしていた。
２）幼児期の社会情動的スキル，集中没頭等に関する文献研究を行った。また，5歳児担任保育者2名に対し，クラス全員60名の社会情動的スキルや認知的スキル，生活スキルに関する質問紙調査を1月に実施し，5月に回収予定である。3～5歳児の2，3年間のデータから，社会情動的スキル，認知的スキル，生活スキルとの関連を分析する。また，集中没頭等の生起と，社会情動的スキルとの関連を検討する予定である。加えて，集中没頭する姿が比較的よく観察される幼児について，事例分析を行い，社会情動的スキルの視点から検討する。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度は，幼稚園での保育観察と質問紙調査等を縦断的に実施したが，コロナ禍により調査を中断し，新規調査を再検討して一部中止・延期した。
１）保育観察として，月1回程度5歳児2クラスでビデオカメラとデジタルカメラを用いて，8回の自然観察を行った。現在5歳児の集中没頭等の事例を抽出し，分類項目に沿って整理し分析中である。なお，幼児理解や事例解釈のための保育者インタビューは回数を減らし，遠隔でインタビューを行った。
２）社会情動的スキルや集中没頭等に関する文献研究を行った。また，クラスの幼児の社会情動的スキル等に関する保育者への質問紙調査を実施したが，回収が遅延し5月末に回収予定である。
３）新規調査（3歳未満児担当の保育者，1年担任教師へのインタビュー，訪問観察等）を予定していたが，実施できなかった。令和3年度に，現場の状況に沿って可能な方法で一部実施する予定である。
|
| 今後の研究の推進方策 |
令和3年度は，これまでのデータを整理し分析を進めるほか，3歳未満児の集中没頭等に関する調査は，計画を見直して保育者へのインタビュー等により事例収集する予定である。
１）保育観察で得られた3歳児から5歳児までの映像から，集中没頭や弛緩発散の事例を抽出し，分類項目に沿って分析する。3～5歳児の集中没頭する姿の特徴をまとめて，事例分析を行う。なお，ビデオ映像の文字起こし等は，研究補助を活用して進める。
２）保育者を対象に実施した，3～5歳児クラスの幼児の社会情動的スキルや認知的スキル等に関する質問紙調査のデータを分析し，それぞれの関連や，集中没頭等の生起と社会情動的スキルとの関連等を検討する。データ入力や分析では，研究補助を活用する。
３）新規の園や学校での観察は難しいため，3歳未満児の担任保育者へのインタビュー等を実施して，集中没頭や弛緩発散の事例収集を行い，年齢ごとに整理する。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
保育所・認定こども園において，3歳未満児の集中没頭等に関する訪問調査を実施する予定であったが，令和2年度もコロナ禍によって新規調査を実施できなかった。また，国内での学会発表へ参加予定であったが，研究の進捗の遅れやweb開催になったため，旅費を使用できなかった。
令和3年度は，研究計画を見直し，3歳未満児の保育者へのインタビューと事例収集の依頼を行う予定であり，そのための物品費（デジタルカメラ，消耗品）が必要である。
また，分析のためのノートパソコンと統計ソフトの物品費，ビデオ映像やインタビューの文字起こし，データ入力等の人件費・謝金，学会参加等の旅費，研究のまとめとして集中没頭する姿をまとめたリーフレットの印刷代が必要となる予定である。
|
