研究実績の概要 |
令和3年度は,ヘルスニューメラシー・テストを開発し,その影響について調査を実施した。ヘルスニューメラシーとは,「個人が効果的な健康上の意思決定を行うために必要な数量,定量,グラフ,生物統計および確率的な健康情報にアクセス,解釈,伝達,行動する能力の度合い」と定義される。ヘルスニューメラシーは健康や安全に関する様々な事象のリスク認知,確率による結果の推定,リスクとベネフィットを比較する能力などへ影響し,人々の意思決定の重要な規定要因であると考えられる。方法は,一般的なニューメラシー尺度を参考にして,保健や医療の文脈で用いられるヘルスニューメラシー・テスト10項目を独自に作成した。測定項目には「数量」「グラフ」「統計および確率」を含めた。調査対象者は20~59歳までの男女200名(男女各100名)でweb調査を行った。結果から点双列相係数により一次元性が確認された。項目反応理論に用いた分析によってテストの精度が高いことが確認された。またテストの信頼性と妥当性についても良好な結果が示された。 続いて作成されたヘルスニューメラシー・テストを用いて,遺伝学的検査に対するリスク認知とベネフィット認知,遺伝学的検査意図に関連するかどうかを検討した。日本人一般市民2,000人(20~59歳)を対象にWeb調査を実施した。ヘルスニューメラシーは遺伝学的検査意図へ直接の影響は低かったが,遺伝学的検査のリスク認知からベネフィット認知を介して遺伝学的検査意図へ影響することがわかった。 次に海外のヘルスニューメラシー教育の実態を調べた。例えばオーストラリアの保健体育では,データを数値や図表形式で表現したり解釈したりする学習が組み込まれている。具体的には8年生から10年生では.栄養,健康維持増進を目的とする運動などに関連する数値情報を入手し理解するといったニューメラシーを向上する学習が行われている。
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