本年度は、環境調節技術としての混植効果の検討及び、課題解決の構想における生徒の発話分析を行った。環境調節技術としての混植効果の検討では、ダイコンとニンジンの混植による食害の抑制効果について比較栽培を計2回実施した。食害が出た葉については、収穫時の各ダイコンの全ての葉を撮影し、それらの写真画像について筆者らを含む3名で目視し、確認した。比較栽培1において、ダイコン1本とニンジン1本を同時に播種して混植した場合、ダイコンの70.0%の葉に食害が見られた。このことから、同時に播種したため、ニンジンの葉が育つ前に、ダイコンの葉が食害されたと推察された。比較栽培2において、ニンジンの葉がある程度育ってからダイコンの葉が育った場合、シルバーマルチを使用して栽培したダイコンと同様に,食害が出なかった。このことから,ダイコンとニンジンを混植することによって食害が抑制されることが検証されたと考えられる。課題解決の構想における生徒の発話分析では、「ダイコンを栽培して新入生のための保存食にしよう」との題材の授業実践において、病害虫防除の手立てを構想する場面を対象とした。対象の生徒は、東京都内A中学校3年生41名(1クラス)であった。生徒たちは、モザイク病や軟腐病などの病虫害についてインターネットで調べ、品質への影響の大きさや発生の可能性を基に解決方法の手立てを検討した。発話分析の結果、病気や害虫の被害に関する知識を生徒間で互いに補い、各種被害に関する生徒の意見を並べた上で手立てを講ずるべき病気や害虫を選定している様相が明らかとなった。また、解決方法の手立てごとに、経済面、環境面、社会面から評価を行う場面においては、3つの面の釣り合いや程度について複数の意見を擦り合わせていることが窺われた。
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