研究課題/領域番号 |
18K02527
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
濱中 裕明 兵庫教育大学, 連合学校教育学研究科, 教授 (20294267)
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研究分担者 |
加藤 久恵 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (00314518)
吉川 昌慶 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (10757743)
川内 充延 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (50737624)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数学と数学教育学の架橋 / APOS理論 |
研究実績の概要 |
本研究は,数学教育学の理論枠組みに基づいて,数学と数学教育学の融合を図り,授業開発および教師教育への還元を図るものである. 当該年度の前年では,1次関数の理解をとりあげ,example space,および,APOS理論の理論枠組みを援用し,数学,数学教育学を専門とする研究者が共同で,その在るべき発達や様相に関する研究を行ったが,令和元年度にはこの考察を研究論文としてまとめあげ,採択・発行されるに至った. また本年度には,Duvalの記号論的表現に関するレジスター理論を用いて,1次関数の理解に関するさらなる考察を行った.1次関数という関数族は,日本語では字義通り「1次式で表される関数」であるが,海外,たとえば英語圏では,「first degree function(1次の関数)」と呼ばれることはほとんどなく,「linear function(直線状の関数)」と呼ばれる.つまり,英語の文化では,「1次関数」という概念には直線との関係がアプリオリに組み込まれており,直線に関わらずにこの概念を導入することは考えにくい.一方で,日本語では「1次式で表される」という性質がアプリオリであり,そのグラフはどのようになるかという問いがそれに付随する形となる.そのため,式表現レジスタでの操作がプライマリとなり,ともすればグラフを想像することなく解決可能な問題も多い.Duvalは,一つの表現レジスタのなかで閉じた操作ではなく,異なる表現レジスタの間の変換を通して,数学的概念の理解が深まることを指摘しており,用語としての「1次関数」が概念理解に与え得る影響について考察を行った.この研究はICME14(数学教育国際会議14)での研究発表して採択済みである.ただし,ICME14は新型コロナウィルス拡大の影響により,1年延期される予定で実際の研究発表は2021年(令和3年度)となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究発表を,令和元年度に研究論文としてまとめあげ,採択・発行されることに至った.また,新たな研究についても,国際会議(ICME14)での研究発表として採択されるに至っていることから,令和元年度については,おおむね順調に進捗していると判断できる. ただし,ICME14は開催が1年延期されることから,令和2年度の予定は若干影響を受ける.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究分担者は,すべて同じ大学のスタッフで構成されていることから,新型コロナウィルス拡大が研究打ち合わせ等に及ぼす影響は最小限に抑えられると考えられる.しかし,一方で研究発表の機会については縮小が懸念される. 特に,ICME14(数学教育国際会議14)での研究発表を令和2年度の研究進捗のひとつの大きなステージと考えてきたが,これが1年延期されたことから,令和2年度はむしろ翌年度に予定していた具体的な授業開発や教材開発を早めに開始していきたい.今年度は研究発表の機会縮小も予想されることから,翌年度の研究発表にむけて,発表よりも,研究・考察を深め,発表すべき成果を蓄積する年としたい. そうしたこともあって,今年度の研究費のうち,予定していた旅費については,必要となる時期が来年度に持ち越される可能性が高く,その場合には来年度に持ち越しとなる可能性がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で3月の旅費が1件減となったため. 会議等のオンライン化に対応する設備として,2020年度に使用予定.
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