研究課題/領域番号 |
18K02530
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
加藤 寿朗 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (30274301)
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研究分担者 |
新見 直子 広島文教女子大学, 人間科学部, 准教授 (40584280)
梅津 正美 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (60284329)
前田 健一 岡山商科大学, 経済学部, 教授 (90101451)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会科教育 / 児童・生徒 / 批判的思考力 / 発達 / 授業デザイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,児童・生徒の批判的思考力の発達に関する実証的データの収集と発達過程に基づく系統的な小・中学校社会科授業モデルを開発することにある。具体的には,以下の3点を研究の柱として設定した。1.社会科授業を通して育成する批判的思考力の構成要素を明確にすると共に,児童・生徒の批判的思考力の発達に関する量的・質的調査を行い,発達の様相及び認識・発達のメカニズムとその条件を明らかにすること。2.児童・生徒の批判的思考力の発達を促進(形成)する条件及び指導方略について実験的な授業を通して明らかにすること。3.研究1,2の成果をふまえながら,発達に焦点をあてた批判的思考力を育成するための基礎理論を検討し,児童・生徒の批判的思考力を促進する系統的な小・中学校社会科授業モデルを開発すること。 本年度は ,上記研究目的のうち,中学生の批判的思考力の発達に関する研究を中心に進めた。具体的には以下の研究を行った。(1)中学生の社会的思考力・判断力の発達の質的転換期である2年生後半から3年生の時期に,批判的思考力を育成するためには,帰納的推論能力,演繹的推論能力,社会的判断力のどの能力に焦点化しながら授業を構成することが効果的なのかを,歴史的分野の実験的授業を通じて明らかにすること。(2)実験的授業から得られたデータの分析・評価に基づいて授業仮説を得て,それをふまえた授業デザインの一例として具体的な歴史単元を開発すること。 徳島県下の中学校で実施した実験的授業の結果から「批判的思考力の育成には,中学校2年生後半から3年生の時期に,その主要な促進要因である社会的判断力の育成をめざす授業の構成と実践が必要である」という授業仮説を得た。授業仮説をふまえた授業デザインとして,歴史的分野単元「女性と戦争」(3単位時間)を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,中学生の批判的思考力の発達に関する調査と実験的授業の結果を分析し,批判的思考力と他の諸能力との関係についての検討を中心に行うことを予定していた。授業デザインに関する実施校の協力が早期に得られたことから,次年度に行う予定であった授業仮説(生徒の批判的思考力の発達を促進する条件及び指導方略)に基づく授業実践と結果の批判的吟味による授業モデルの開発を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の進捗状況を踏まえて次年度以降は次の研究を中心に行う。(1)批判的思考に関する国内外の著書・論文・資料を収集・分析し,児童・生徒の発達に焦点をあてた批判的思考力を育成するための基礎理論を検討すること。(2)小・中学生の批判的思考力の発達を促進(形成)する条件及び指導方略についての調査及び実験的授業を実施し,その結果を分析すること。(3)小・中学生の批判的思考力の発達と形成に関する研究成果を学会等で発表し,意見を踏まえながら批判的思考力を育成するための授業仮説を検討すること。 なお小・中学校社会科の教育内容に即した形で調査・授業を進めること,分析にあたっては心理学的手法を用いることから,研究代表者と研究分担者のより緊密な共同研究体制を構築しながら計画・実施・分析という一連の研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)中学生の批判的思考力の発達調査のための問題作成及び分析に関わる費用が当初の計画より少なかったためである。次年度以降に行う小・中学生を対象とした調査・授業のための物品等の購入に関わる予算として繰り越した。 (使用計画)研究の進捗状況を踏まえながら,【今後の研究の推進方策】で述べた研究計画に基づき,次年度の研究費は次の2点を中心に使用する予定である。一点目は,調査・実験的授業の実施及び分析に関わる物品費・印刷費と授業分析のための研究打合せ旅費である。二点目は,研究成果の発表旅費や資料収集に関わる旅費である。
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