研究課題/領域番号 |
18K02534
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
幾田 伸司 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00320010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国語教科書 / 説明的文章 / 教材史 / 小学校 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後期の小学校国語教科書に採録された説明的文章教材の採録史を総括的に記述し、説明的文章教材を通して学習者に提示された教育内容の変容過程を明らかにすることを目的としている。研究の基礎資料として、戦後小学校教科書において、どの時期にどのような説明的文章教材が採録されたかを一覧化した教材目録に、それぞれの教材で扱われている題材・内容、筆者の意見、文章構成等の情報を加えた、説明的文章教材データベースの整備を行っている。 本年度は、昨年度に引き続き、教科書センター附属教科書図書館等での調査を行い、教材本文の収集とデータベースの整備を進め、昭和40年代以降についてのデータベース作成を完了させた。また、作成したデータベースを基にして、昭和46年度以降の教材採録状況の変化、扱われている題材・テーマ、構成、修辞技法等に関する教材の特徴の変遷について、検討を行った。 昭和46年度から令和元年度までの約50年間に刊行された教科書に採録された説明文教材は813編であった。これらのうち、10年以上継続された教材は208編であり、7割以上の教材が3回の教科書改訂を待たずに差し替えられていた。採録年数が30年を超える教材は14編であるが、このうち低学年教材が8編、中学年教材が5編で、学年が上がるにつれて教材の差し替えが多くなる傾向が認められる。教材の題材としては、動物や昆虫、植物の仕組みや生態といった理科的題材が最も多く、ついで衣食住や伝統行事などの生活的な題材も採られている。また、昭和60年前後からは環境問題といった社会問題を扱った教材も増えている。 これらの検討結果については令和2年度中に研究発表として報告するとともに、作成したデータベースの一部を公刊する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は説明的文章教材データベースの完成と、作成したデータベースに基づく教材採録状況の集計・分析を目標とした。説明的文章文教材データベースは、昭和40年代以降の約50年分については整備でき、この期間の教材の特徴について検討を行った。次年度は、検討結果を総括し、研究発表等を行う。
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今後の研究の推進方策 |
現在、データベースに基づいて説明的文章の題材・内容の時期ごとの特徴を記述し、題材・内容の変化の背景についての考察を進めている。今後、採録期間が長い典型教材について、内容や文言の異同などを検討し、教材内容が書き換えられる背景を明らかにする。 また、通時的に見ると昭和55年度、平成14年度の改定時に教材の差し替えが多く見られるので、この時期に焦点を当てて教材観がどのように変化したかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月に教科書研究センターで教材調査を行う予定としていたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、関東地域への出張の自粛が要請されたため、本調査を見合わせた。それによって計上していた旅費が残額として生じた。当該調査は、緊急事態宣言が解除され、関東地域への出張自粛が解除された後、できるだけすみやかに実施する予定にしている。
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