研究課題/領域番号 |
18K02535
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
米村 耕平 香川大学, 教育学部, 准教授 (20403769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学習カード / 学習資料 / 簡易化された教材 |
研究実績の概要 |
言語活動の充実を図った先行研究では、学習意欲の高まり、言語活動の充実、知識・技能の習得の育成をねらいとし、「話し合いのルールカード」「アドバイスカード」などの学習カードを活用した取り組みや、遅延再生装置を用いた動画資料やタブレット端末により作成できる自身の技の分解図資料を用いた取り組みが行われ、その結果、友だちの技を見る視点が明確になり子ども同士で積極的な話し合いが行われたり、見られている児童が自分の技の見てほしいポイントを伝えながら運動に取り組んだりする姿や、自身の動画や分解図の映像を客観的に観察し、その資料を通じて友だちからアドバイスをもらう姿が見られたことなどから、学習意欲の向上や仲間との積極的なかかわり合いには有効に機能したことが明らかになっている。 しかしながら、単に話し合い活動の時間を設定したり、形式的な言語活動を行ったりしただけでは学習成果につながるとは言い難く体育授業において「話し合い」を目的としたり、「話し合い」に多くの時間を費やしたりする授業が増えてくるのではないかという懸念が生じる。したがって「言語活動の充実」を図ることは、体育科において子どもたちの言語を用いた表現力、論理的な思考力、コミュニケーション能力だけを高めることが目的ではなく、パフォーマンスの向上や技能の向上、戦術的な理解を深めることなど学習の成果をあげるための手段であるという認識をもっておく必要がある。 また、言語活動を生み出す手たでとして、体育授業に参加している子どもが対等な立場で対話しながら安心して学ぶことのできる教材や学習課題の設定が必要であり、運動技能が最も低い子どもが安心して参加できる技能水準で設定された主教材を適用することや、本人の経験などの感覚のみに頼らず、映像データやゲームデータなど客観的資料を基に思考しなければ解決できない学習課題の設定が必要である事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行実践が多数収録されている雑誌「体育科教育」、先行実践研究が収録されている「体育授業研究」、「体育科教育学研究」、「スポーツ教育学研究」をレビューし、くわえて学校教育における言語活動に関する資料をレビューし、これまでの体育授業における言語活動の在り方についての成果や課題が明らかになった。また、それらを元に香川県内の小学校の教員および流通経済大学教授の福ヶ迫善彦氏と言語活動の在り方について意見交換し、また、福ヶ迫氏が行っている認知的学習に関する研究についての講義を通して学習成果の捉え方に新たな視点が加わった。 また、本研究で用いる予定の主教材(台形ハンドボール)について実際に小学校体育授業で実践してもらい、その有効性と課題について検討した結果、学習者の実態に応じた6~8時間程度の単元を通した教材の配列が明らかになった。 さらに、小学校体育授業におけるゴール型ゲームの映像の収集が終了し、それらの映像を元にゲーム課題の解決へと導く映像資料作成の準備ができつつある。これらの映像資料が完成した後、ゲームのデータと関連づけながら小学校体育教員と資料の有効性について検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集してきたゴール型ゲーム教材の映像データから客観的資料を基に思考しなければ解決できない学習課題の設定の在り方について検討を加える。具体的には学習課題に迫ることが出来る映像資料を課題毎に作成しその有効性について検証する。 そしてここで開発した映像資料と6~8時間程度の単元を通した主教材の配列を基にゴール型ゲーム授業の指導プログラムを開発し、その有効性について香川大学教育学部附属学校の体育授業を対象として予備調査を行う。予備調査では、授業そのものの正否を確かめるために、体育授業の形成的授業評価票を適用し学習者が満足する授業であったかどうか検討する。また、開発された教材の有効性については、対象授業のゲームをVTRにて撮影し、ゲーム中に発揮された学習者のゲームパフォーマンスをGPAIを用いて評価・分析を行う。くわえて、学習者の言語活動については各グループの活動を記録し内容をテキスト化して評価する。また、実施した授業者へのインタビュー調査を実施し、授業者の立場から認められた成果と課題について検討する。以上の分析方法から得られたデータから明らかになった学習成果につながる言語活動を生み出すゴール型ゲーム教材の有効性及び課題をもとに指導プログラムのさらなる改善・修正を加え、学習成果につながる言語活動を生み出すゴール型ゲーム教材を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度行えなかった動画編集ソフトの購入および動画編集に係る謝金として支出を予定。
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