研究課題/領域番号 |
18K02536
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福井 一真 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90583815)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 図画工作 / 研究会 / 道具の取り扱い |
研究実績の概要 |
2019年度の研究実績は主に1.現職教員を対象とした研修の継続、2.「道具マスタープログラム」の試行、3.「第16回新しい学習指導要領を語る会@愛媛大学」の実施、4.子どもの造形プロセスについての論考掲載の4点である。 「1」では、新たに彫刻刀の基礎的な扱い方の再確認することを目的として、消しゴムハンコを用いて2版多色刷りを試みた結果、彫刻刀に対する知識や技術を向上させることができた。対象は「教職員レベルアップセミナー」に参加した愛媛県内の現職教員50名(内訳:小学校40名/中学校4名/特別支援学校/6名)である。 「2」では、愛媛大学教育学部学校教育教員養成課程小学校サブコースの3回生有志である。参加学生は2回生後期「初等図画工作」の授業における「よばい棒」制作の中で小刀の基本的な使い方をマスターしている。そのため、小刀などの使用技術の更なる向上を目指すことを目的として「木のスプーン」制作や「消しゴムハンコで2版多色刷りに挑戦」などを実施し、参加者の小刀などの使用技術の向上を確認することができた。 「3」は、教育課程研究センター研究開発部所属の岡田京子教育課程調査官を講師としてお招きし、主に愛媛県の現職教員を対象として実施した。新学習指導要領から普段の図画工作科に対する理解をより深める機会となっただけでなく、本研究において実施予定である「図工道具マスター研究会」の参加者を募ることができた。 「4」では、上記岡田氏からの依頼により文部科学省教育課程で編纂されている『初等教育資2020年4月号no.992』におけるフロントライン教育研究に「つくりながら考える造形プロセス」とは」という論考を執筆し、掲載された。これにより、自身の研究成果を社会に発表する機会を得ただけでなく、図画工作科における子どもの造形活動への理解を広く伝えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は(1)小学校現職教員の研修機会の充実(2)学生の学修機会の拡充(3)実践的な教育研究の推進という3つの柱で構成されている。ここでは主に(2)について詳述したい。昨年度、小刀を中心とした道具の使用方法を段階的に身につけるプログラム内容を検討した。そこで2019年度は「初等図画工作」における小刀の取り扱いレベルを「初級」と位置づけ、「中級」レベルの内容を実施する「放課後!図工道具マスター講座」として「第1回木のスプーン制作」と「第2回消しゴムハンコで2版多色刷りに挑戦」を開講した。「第1回木のスプーン制作」の開講時期は2019年5/29~6/26(毎週水曜日18:00~19:30)とし、対象は2回生後期に「初等図画工作」受講した3回生である。第1回は「持っていて楽しくなるような木のスプーン」制作(全5回)とし、使用する樹種をパイン材、サイズを約H25×W250×D40(mm)と設定した。本講座への参加者は9名であった。さらに第2回(2019年7/3・7/10:参加者4名)では、消しゴムハンコで2版多色刷りにチャレンジした。ここでは彫刻刀(主に三角刀)の使用技術をより高めることもねらいの一つとしていたが、2版多色刷りを経験することによって、木版画制作への理解を深めることにもつなげた。また、布地用インクを準備しTシャツ等の布地へスタンプすることで制作意欲の向上を図った。 本講座を実施することによって図画工作科で使用機会のある小刀と彫刻刀という刃物の取り扱いに対する知識や技術の向上を図ることができた。また、参加学生に実際に制作してもらうことで、「図工道具マスター研究会(仮)」の具体的なプログラム内容を試行することができた。とはいえ、現職に対する研修をどのような形で実施するのかということや学生の参加人数が少なかったことから実施時期や方法など2020年度以降の検討課題も残った。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、依然課題として残っている現職教員へのプログラムメニューの具体化とその実施方法を検討し、試行することとしたい。2019年度に学生を対象として試みた「放課後!図工道具マスター講座」を基軸にし、「図工道具マスター研究会(仮)」として道具使用にかかわる研修や図画工作科の勉強会を開催する予定である。すでに「新しい学習指導要領を語る会@愛媛大学」において研究会への参加メンバーを募集しており6名の参加を見込んでいる。 しかし、現在世間を震撼させている新型コロナウィルスの影響で、2020年4月17日に愛媛大学での教育研究活動BCP(Business Continuity Plan)ステージを「レッド」に設定され、対面での授業を禁止(現時点では6/10まで)され在宅勤務を余儀なくされている。また、県内の小学校も休校している。こうした対応に伴い、上記研究会についても対面で実施ができない状況にある。道具の取り扱いを主とする本研究会では、実際に道具を使って制作することで、身体を通して得られる知識や技術の在りようを重視しているため、オンラインや遠隔で実施することが難しい。ましてや小刀や彫刻刀という刃物を主に取り扱うこととしているため、現時点では研究会の開催が未定と言わざるを得ない。そこで、この状況がいつまで続くか明らかでない以上、次のような方策を考えている。 教育研究活動BCPステージが「イエロー」になった時点で開催できるように、プログラムの具体的な内容と道具の整備を行う。7月の時点でステージの移行がみられない場合は、小刀や彫刻刀を取り扱う動画制作を試みる。主に取り扱う際の注意事項や手の動かし方を中心としたもの、「魔法の杖」や「凸凹不思議な鉛筆」、「切ってつないで木のかたち」などの題材紹介動画の作成をするなど、工夫をするなど臨機応変に研究を進めていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月の新型コロナウイルスの影響で、第42回美術科教育学会が中止になり予定していた旅費等を使用することができなくなった。この繰り越し金は翌年度の学会旅費等や当初予定していなかった動画を撮影する機材の費用等にあてる。
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