研究課題/領域番号 |
18K02539
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
赤木 恭子 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (90459975)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 美術教育 / 地域社会 / メディア / イメージによる経験 / 対話 / 連携 / 国際交流 / 映像メディア表現 |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究実績の概要を次に記す。 研究計画に従い、令和2年度以降は、これまでの活動や研究成果を考察する段階としている。令和2年度は、前年度に引き続き、平成31年(令和元年)に実施したBrazilのUniversity of Campinas研究者(Paulo Cesar S. Teles氏)との国際交流・連携を通した実践(ふるさと熊本アートプロジェクト2019 星あかり 七夕夢美術館 Beyond the Southern Cross)を踏まえて研究を行った。 本実践研究では、日常から心象を刻む創作行為において、輻輳するイメージやメディアの性質に着目し、考察を進めた。その結果、美や造形への共感や共有による多義的な自己表現と他者世界とのつながりを生む総体的なイメージが、地域性を契機にグローバライズされていくことにより、創作行為に関わる個人が、それぞれに、「生きる拠点」を再構成する「深い対話と経験へ至る場や経緯」を認めることができた。このことは、図工や美術において、人々の暮らしや社会に関わる教科としての価値や学びのあり方に、美的経験を獲得しうるメディア(媒体)としての存在を問い直し、人間形成を目指す学修者(子ども達や美術教育者)の育成に、創造の視点を再考するものとなった。 本研究の別の視点からは、遠隔授業用の映像コンテンツの開発等、ローカルテレビ局の支援を受けて、映像制作における「イメージや媒体の特性」を継続して検討する機会を得た。 以上から、令和2年度は、メディアの媒体性を継続して多角的に研究すると共に、国際的な視野を踏まえた学修プログラムの構築や教材開発を目指す研究者交流事業が進むなど、地域社会や教育の場における連携という諸相から、さらなるデバイス的な展開をみることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の実績概要に照らし、次に、研究活動の進捗状況を記す。 本研究は、大学教育(美術教育)において、地域社会における美や造形のあり方を、創作行為におけるイメージ(映像や心象の表現)によって見出される媒体の性質から捉え、学修に関わる対話的な経験へのプロセスへつないでいく可能性を考察するものである。 令和2年度は、コロナウイルスの影響により、直接的な実践活動を除いた研究活動に終始する状況にあったが、研究計画上、これまでの実践をまとめる段階であり、実績概要に示す研究活動(ふるさと熊本アートプロジェクト2019)の一部については、学会で研究発表を行うと共に、論文を執筆・発表した。 本研究によって、アートプロジェクトにおけるリサイクルアートや先端芸術(メディア・アート等)を踏まえての環境構成、「ふるさと」をテーマとする地域性や異文化の表現を踏まえた教材の創作に関して、地域社会に協働によって創造される場の生成過程の分析・考察を進めることができた。本研究課題におけるメディアコンテンツの制作等については、コロナ渦で令和2年度は実施できなかったが、変化する世情に合わせて、次年度以降は、遠隔での対応も交えながら、研究を進めていく予定である。また、令和元年から、研究計画当初には構想していなかった地域社会や学校教育に関わる「国際的な連携の視点」が生まれており、研究成果にも広がりが出たことから、今後、この可能性をさらに追究していきたいと考えている。以上により、コロナ渦で停滞している箇所もあるが、進展もみられたため、進捗状況は、おおむね順調と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、本研究の4年目に当たる令和3年度は、前年度に引き続き、これまでに実施した大学教育(図画・美術)を視点とする連携活動を、学修プロセスに着目しながら考察し、研究を進める。最終年度には全体をまとめ、研究成果の公表を行う。以上を実施するにあたり、令和2年度の研究実績の概要と進捗状況を踏まえ、今後の研究の推進方策を以下に記す。 1.これまでの実践の成果を学会等で発表すると共に、既存の連携や協働のあり方から、メデイア(媒体)に着目し、「イメージによる対話」からクリエイトされる学修の場をさらに追究する。 2.大学教育(図工・美術)における地域社会を踏まえた教育内容の考察と、これまでの研究経緯を記すアーカイブズやメディアコンテンツの制作に関する研究活動を行う。 3.2に関連する制作等を進めながら、協働や連携の視点から、これまでの成果の公表に加えて、メディアによる表現の場を検討する。
今後は、コロナ渦での対応策も考慮しながら、地域社会との連携による調査・研究・教育の関係性を、大学教育を中心とした美術教育における対話的な学修の可能性に照らして追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、コロナウイルスの対応で、メディア機器を用いた現場撮影を含む活動や、カリキュラム構想や教材開発に関する実践、学会他、訪問や発表による現地調査・研究等、対面や移動を含む実践活動が留まる結果となった。そのため、これに関連した予算が次年度へ繰り越しとなっている。
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