本研究は,教員が若手期に身に付ける小学校体育授業の力量を明らかにし,その力量は養成段階においてどのように形成されるか実証的に明らかにすることを目的とする。目的を達成するために以下の4点の研究課題を設定した。1点目は,国内外の文献や研究資料等で体育授業に関する教員の授業力量及び専門性を明らかにすること,2点目は,若手期における力量を量的・質的調査により実証的に検討すること,3点目は,養成段階において身に付ける授業力量の内容と形成過程を実証的に検討すること,4点目は,若手教員の事例について養成段階との関連を検討することであった。コロナ禍における研究計画の調整のための期間延長を経て遂行した。 小学校体育授業の力量として,信念,知識,教授技術に焦点をあて,文献及び資料検索,量的・質的な事例研究により実証した。2022年度は,体育授業における児童の学びについて認識できているかを検証した。現職教員については,教師の意識や経験,研究している教科の差異により,体育授業における児童の学びの認識の程度に差異があることがわかった。また,小学校教師志望学生の体育授業の学習観及び学習方略の理解の程度や教科の指導法の科目での学修による変化を検討した。その結果,学生は体育授業の学習観及び学習方略を肯定的に捉えていること,学修によりこれらの認識が高まることが明らかとなった。また,とりわけ積極的志望群に,教科の指導法に関する科目での学修により認識を高めることが示唆された。 本研究においては,信念や知識,教授技術を授業力量の要素として検討したが,現職教員や教師志望学生が自律的に学ぶことが求められていることを鑑みると,成長や発達への支援などの視座から検討することが課題となろう。
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