最終年度は、社会的結束(social cohesion)を生み出すための教育的活動として、コミュニティ・サービスを学習方法とした取り組みに焦点を当て、日本と、アジアの中でも極めて複雑な多文化状況にある香港との事例を比較し、その取り組みの背景、内容、方法等の相違と共通点について検討した。具体的には、学習活動の一環としての地域参加を通じて、社会的結束を促進するための学習と行動を生徒に促すために、日本と香港の小学校が開発した 2 つの学習単元を比較した。比較のために 2 つの類似した学習単元を選択し、どちらも地域社会の高齢者に関連する問題に焦点を当てて、検討した。両小学校のカリキュラムと実践の分析に基づいて、香港と日本の社会的結束のためのコミュニティ参加の促進に関心のある教育実践者向けの 5 つの方向性を概説した。それは、サービス学習の実践、社会的結束の促進、本物のスキルの学習、地域参加のカリキュラムへの挿入についてである。どちらの実践においても、学習として組織された地域参加を通して社会参加の意義やそこにおける有用感を実感させるカリキュラムを充実させることで、地域を活性化し、社会的な結束を生み出す社会人として活躍できるよう支援する一つのストラテジーを提示することに成功している。本研究ではさらに、脱工業化・高齢化社会における若者の地域社会への貢献を促進するために、そのような学習単元を開発することの重要性を指摘した。
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