研究課題/領域番号 |
18K02549
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
浅野 由子 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (80508325)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グローバル / ローカル / アクションプログラム / コミュニティ / スウェーデン / 持続可能性 / 公民館 / SDGs |
研究実績の概要 |
研究計画では、GAP(グローバル・アクション・プログラム)の目標の中でも、1年目に、政策的支援、2年目はユースの参加と地域コミュニティーのESD事例の奨励、3年目に、各国のGAPに向けてのグローバルとローカルの持続可能性に関する活動を整理し、最終的には、GAPのモデルを示す為に、必要十分条件を分析・考察する予定である。初年度は、ウプサラ市および岡山市のSDGs(持続可能な開発目標)やGAPの政策的支援の現状を、市役所、学校機関、企業、NGOの各機関を訪問し、インタビュー調査を行った。特に、ウプサラ市は、WWFの「One Planet City Challenge」で、 世界で環境に優しいまちづくりをしている市に選出され、岡山市は、6月にSDGsの政令指定都市となったこともあり、両市とも、率先的に、持続可能性を目指す政策的支援を行なっていた。特に、ウプサラ市においては、大学(特にSWEDESD、スウェーデン国際ESD研究所)が主導で、高校(ローゼンダール高校)またはNGO機関とが連携して、イベントや会合を数多く設けていた。岡山市においては、大学や学校機関よりも、自治体の市役所(ESD推進課やESD推進委員会)が主導で、学校、企業、公民館、NGOと連携して、イベントや会合を設けていた。岡山市の特徴としては、ESDやGAPの考え方が、学校機関や企業、公民館やNGOに浸透するような仕組みができている事であった。例えば、公民館員へのESD研修やESDのコーディネーターの研修や養成、自治体によるESDアワード(岡山賞)の設立と奨励等は、市民のESDの意識向上にも大きく影響していた。それは、2016年に、岡山市がユネスコのグローバルラーニングシティーに選出されたり、同時に、市民主体の協働のまちづくり条例が成立した経背景にもよると考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の調査は政策的支援の追跡であったが、両市から関わる資料を入手済みで、分析・考察中である。 調査は、ウプサラ市では、大学、高校、NGO主催のSDGsやGAPのイベント、岡山市では、公民館、小学校、企業主催の職員に向けての研修イベントに参加し、フィールド調査を行った。インタビュー調査では、ウプサラ市が、グローバルとローカルに持続可能なまちづくりを目指している現状が、ウプサラ市の市議会議長の話から明らかになり、そういった政策に、大学や高校、NGOが主催で、ESDやGAPに関するイベントをトップダウン的に開催していた。ただコミュニティーに根ざしたイベントは、図書館で行われるサステイナブルフォーラムやスタディーサークルといったもの以外、岡山市で行われている程ではなかった。岡山市では、ESD推進課の職員とESD地域推進協働センターの活動内容を追跡し、2016年の「協働のまちづくり条例」により、どのような活動が発展してきたのかを明らかにした。そこでは、ESD推進課が主体となって、岡山ESD推進協議会を年2回、委員会も、年1回も設けることにより、組織的にESDを推進しており、イベントとしては、ESDカフェや岡山ESDアワードを、国内外に呼びかけることにより、ESDならびにGAPをローカルならびにグローバルに促進している現状が明らかとなった。大学でも、SDGsを掲げて、市の委託で地域連携センターを設けて、地域の連携を促進している現状があり、学際的な教養科目を設け、大学外の実践者を講師として招待し、地域との連携を活性化している現状もあった。企業との連携も進行しており、持続可能なビジネスチャンスを生み出していることが明らかとなった。その背景には、岡山が、地域の環境保護活動を、90年代後半から地道に行い、今世紀にはグローバルにもESDやDESDへの活動を進めてきた故であることも考察された。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、ユースと地域コミュニティーのESD事例の奨励調査を、ウプサラ市は、NGO(気候変動へのデモ、ゼロウェイストの活動)やコミュニティーのSDGsのイベント(国連財団のスタディーサークル、プラスチック廃止運動)に参与観察し、岡山市は、RCE(Regional Center of Expertise)のユースの活動(気候変動に関する科学教育、環境問題へのアート事業)や公民館の活動(つながりキッチン、子ども勉強会、学童保育事業)やNGOの活動(障害者自立就職支援のありがとうファーム、高校生の進路相談だっぴ、学生のインターンシップ活動、子どもの遊び支援)に参加し、現状を把握する予定である。インタビュー調査により、イベントをする理由や意義を分析・考察する。それと同時に、若者や地域の市民意識を測るのに、イベントでのインタビューや感想等も含めて、アンケート調査も実施する予定である。2019年は、GAPの最終年であることもあるので、ウプサラ市は、SWEDESDに、岡山市は、岡山市役所に、GAPの現状とNFP(ナショナルフォーカスポイント)の内容について、インタビュー調査を行う予定である。その際に、SWEDESDは、3.教員やトレーナーの能力向上、岡山市は、5.地域コミュニティーのESD事例の奨励の優良例となっていることから、その特徴と2015年からの進展状況を明らかにする。更に、2019年11月23日と24日には、岡山大学にて、ESDと教師教育に関する国際会議が開催される予定なので、参加することで、各国のESDおよびGAPの進行状況を、分析・考察し、グローバルな視点から、スウェーデンおよび日本のGAPの内容を吟味し、ローカルな視点で、ウプサラ市や岡山市のGAPの内容を吟味することで、来年度に予定しているグローバルとローカルを融合するGAPのモデル開発を行う為に必要なデーターを揃える。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に、岡山への3回目のフィールド調査をする予定が、昨年度中にすることが出来ずに、次年度使用額が生じた。翌年度の4月に既にその調査を行なっているが、その調査を含めて、計4回の調査を、2019年度に実施する予定である。
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