グローバルとローカルの持続可能性に関するスウェーデンの活動調査を、ウプサラ市で、各2週間(夏)と1週間(冬)行った。特に、市の持続可能課でのインタビュー調査から、2018-2023の5年間、CO2削減の為の環境負荷を下げる政策(自然保護的アプローチ)を推し進めながらも、移民増加による治安の悪化や若者の自殺率の増加といった問題から持続可能性を促進する策(民主主義的アプローチ)を、推し進めている現状を明らかにすることが出来た。一方で、子どもの権利を守る観点から導入された「子どものオンブズマン委員会」といったNGOが、子どもや若者の意見表明権や参加する権利を守る為に、さまざまな教材やカリキュラムを学校や病院と協力して開発する現状が明らかになった。ローカル組織には、警察、弁護士、カウンセラー、検察官といった多様な専門職員が、1人1人の子どものニーズに合った支援を行う施設「子どもの家」が各自治体に設置される等、時間・空間的にも、人々が支援を受けられる居場所があることが明らかとなった。最終年度は、初年度の「若者(ユース)の活動」と次年度の「地域活動の奨励」調査から統合モデルを示す計画だったが、政策的には、グローバルとローカルな視点から、環境負荷の低減(自然保護的アプローチ)と民主主義の徹底(民主的アプローチ)の両面が不可欠であり、教育的には、各組織において専門家が協働で教材やカリキュラム開発をするといった事例が多く見られた。これまでの事例調査から、スウェーデンとの比較をすると、教育面での差は見られないものの、政策面で研究における「自然保護的アプローチ」と「民主的アプローチ」が統合されていない為、持続可能性つまり環境・経済・社会を総合的に捉える視点が欠けている現状が明らかとなった。しかし、多くのローカルでの活動には、優れた教育的事例があることが明らかとなった。
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