研究課題/領域番号 |
18K02551
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
岩崎 保之 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (60410247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 総合的な学習の時間 / 総合的な探究の時間 / 総合学習 / チームとしての学校 / チーム学校 / 活性化 / 社会に開かれた教育課程 / カリキュラム・マネジメント |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、チームとしての学校で「総合的な学習の時間」(以下「総合的学習」と略記する)を活性化するために、汎用的に実施できるストラテジー(戦略:方策や取組の組み合わせ方を表した道筋)を研究開発し、具体的なタクティクス(戦術:具体的な方策や取組)も例示したリーフレットを作成・配布することである。令和2年度は、これまでに得られた面接調査のうち、中学校及び高等学校の校長及びミドルリーダー教員のデータをテキストマイニング(計量テキスト分析)した結果を国内学会で報告したり、学術論文にまとめたりした。 中学校については、校長は方針の提示、進捗状況の管理、研究指導、地域との関係構築、取組の組織化、計画の立案の6つが役割として抽出された。また、ミドルリーダー教員は、地域との連携・協働、総合的学習の実践、同僚教員の啓発、合意形成・調整、計画の立案の5つが役割として抽出された。 高等学校については、校長は大学・専門機関との連携、地域との調整・情報発信、教育委員会との調整・予算確保、研究指導・職員育成、地域との信頼関係の構築、地域課題への関与、PDCAサイクルの運用の7つが役割として抽出された。また、ミドルリーダー教員は、地域と学校の関係構築、同僚教員の意識改革、計画立案・合意形成、総合的学習の実践、地域素材の研究・開拓の5つが役割として抽出された。 また、これらの諸結果については、総合的学習の実践を推進している小・中・高等学校の校長、ミドルリーダー教員及び生徒に対して説明して、それぞれから意見を求めた。聴取した意見については、今後予定しているアンケート調査における質問紙の設計に反映させる予定である。 上記の研究実績は、総合的学習の活性化に向けた汎用的なストラテジー及びタクティクスの研究開発に向けた基礎的資料として位置付く主要な知見を明らかにしている点において、研究上の意義が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は令和2年度が研究期間の最終年次であったけれども、令和3年2月に「当初計画の遅延・変更」を理由として補助事業期間延長申請を行った。 理由の具体は以下の2点である。 1点目は「自然災害によるもの(感染症の流行等も含む)」である。最終年次においては総合的学習を持続的に発展させるタクティクスおよびストラテジーを、無作為に抽出した小・中・高等学校の校長及びミドルリーダー教員を対象としてアンケート調査を行う予定であった。しかしながら、令和2年度の上半期は新型コロナウイルス感染症の流行により多くの学校が臨時休業を余儀なくされ、調査対象者がその対応に追われた。そのような状況下でアンケート調査を実施しても、統計学上の検定に必要かつ適当な数の標本が得られる見通しが立たなかったため、令和2年度中のアンケート調査の実施を見送った。 2点目は「研究計画の見直しが必要となったもの」である。最終年次においては総合的学習の活性化をテーマとしたフォーラムを開催してアンケート調査の結果を公表するとともに、タクティクスおよびストラテジーの妥当性・有用性や実施上予想される課題等についてファシリテーションの手法を用いて参加者間で協議する予定であった。しかしながら、同感染症がいつ終息するか見通すことができず、参加者が「密」になりがちなファシリテーションの手法で協議することには一定のリスクが伴うことから、アンケート結果の検証を別の手法によって検証する必要があると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年次となる令和3年度では、令和2年度中に実施を計画していた次の研究について、研究内容や研究方法を一部変更して取り組む。 1点目は、無作為に抽出した小・中・高等学校の校長及びミドルリーダー教員を対象としたアンケート調査である。調査対象者が新型コロナウイルス感染症への対応に継続して取り組んでいる状況に鑑み、設問数を限定したり、ウェブ上での回答ができるようにしたりすることを通して、アンケートの回答に係るの負担軽減を図る。 2点目は、4年度間の研究で得られた成果をリーフレットやウェブページなどにまとめて公表し、研究成果を広く国民に還元する。その際、アンケート結果の検証については対面によらない形式を用いて協議し、チームとしての学校で総合的学習を活性化するストラテジー及びタクティクスの精度向上を期す。 これらの研究は、これまでと同様に、教育系NPO法人のスーパーバイズを受けながら行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】 主に「人件費・謝金」及び「その他」の累計額が当初の計画よりも大きく下回ったことが主な理由である。本報告書「7.現在までの進捗状況」において前述したように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って当初の研究計画通りに研究を実施できなくなった(アンケート調査の実施延期、リーフレット等の作成延期など)ことにより、手書きの標本をデータ入力する際の人件費やアンケート用紙の郵送等に係る経費を支出しなかったことによる。 【使用計画】 アンケート調査を実施したり、調査結果を検証する協議会を開催したり、研究成果を報告するリーフレットやウェブページを作成したりする経費として使用する。
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