本研究においては,日本語学習者を対象に使用されている「日本語文章難易度判別システム」を援用して、母語話者、特に高校生にとっての文章難易度の測定の判断に関する知見を得ようと試みた。 具体的には、「日本語文章難易度判別システム」を用いて分析した複数のテキストを高校生に読んでもらい、難易度の判断とその要因や理由について回答してもらう調査を複数校の生徒に対して行うとともに、抽出された一部の生徒に対しては、回答の具体に関するヒアリングを行い、その結果に関する分析を行った。その結果、「日本語文章難易度判別システム」の難度の判断と、調査による高校生の判断とに一定の齟齬がみられたことが特徴的であった。そのことは、回答数の多さに大きな差が認められた項目として、「専門用語の使用」だけでなく、「日本語文章難易度判別システム」では考慮されていない「内容に対する興味のなさ」が示されたことに象徴されている。また、難度は「分かりやすさ」の裏返しと考えられ、既有知識の程度が、語句の分かりやすさや、内容の想像のしやすさに至るまで広くかかわることは容易に想定できるが、「物語のように」「例えが分かりやすい」など表現の仕方による分かりやすさ、「興味があった」「面白かった」など読みを駆動させる動機付けなども「分かりやすさ」(易度)と一定の関係がある可能性も示唆された。 しかし一方で、日本語教育学の研究成果を活用しながら、高校生の発達段階を考慮し、興味・関心と文章の難度や、さまざまな読みのつまずきと難度とのかかわりなどについて、更なる研究が必要であることが示唆されたとも考えられる。 本研究においては、問題提起を行うことにとどまったが、今後、研究課題をさらに焦点化し、教材化やカリキュラム構築を見据えた文章の難度に関する研究を進めることを課題としたい。
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