最終年度には山形市5校と東京都1校の岩石園について、これまでの成果をもとに書籍「変動帯の文化地質学」に執筆を行った。 この研究は山形大学附属中学校の岩石教材園の資料(岩石試料の分布図やリスト)を作成したことをきっかけとして、県内小中学校の岩石園の調査をはじめ,研究期間中に、山形市4校の調査を行い、1960-1970年代に山形県では多くの小・中学校に岩石園が造園されたことがわかったが、校舎の建替などで失われたものもあること、岩石園の岩石の配置や岩石試料の種類は学校ごとに異なるが、地域の岩石が収集されていることや石材として著名なものが岩石園に加わっている共通点も明らかになった。研究期間を通じての成果として以下のことがあげられる。 1.小中学校に過去に設置されてきた岩石園の現状を調査し,基礎的データの整備を行うという目的は、調査した学校ではほぼ達成され紀要論文として現状の記録を残すことができた。2.教材としての岩石園が設置されたものより、校内整備・庭園として造園されたものが多いこと、基礎的データ記録が残されていないことが、授業・学校活動等での活用できないため原因になっていると考えられる。3.県外の学校の岩石園の調査はコロナ渦のためだけでなく、岩石園のある学校の情報収集が難しかった.石橋氏から東京都の学校の岩石園を調査する時に共同で調査を行ったところ、岩石試料の寄付者がいて,やはり山形市と同じ時期に造園されたことが明らかになった。4.教材としての活用については、山大附属中学校の岩石教材園を使って土門氏による火成岩の作りの授業が行われ、どのような特徴から生徒達が火成岩の組織を識別しようとしているのかを考察した。 5. 当初計画にはなかったが、岩石園がない学校で同様の授業を行うために、「ミニ岩石園」として大きめの石を採集して火成岩識別授業を行い、生徒の岩石識別の着眼点を分析できた。
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