研究課題/領域番号 |
18K02569
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安 直哉 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30230204)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 読み方教授 / 長崎県対馬 / 尋常小学国語読本 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、本研究課題の中心となる論文を発表できた。安直哉著「昭和戦前期長崎県対馬における小学校読み方教育小考――嚴原尋常高等小学校編纂『小學校讀方教授細目』の考察を中心に――」(『岐阜大学教育学部研究報告=人文科学=』68巻1号、pp.225-234)である。 国定国語教科書教材とて、時代時代によってその解釈は異なる。それのみならず、地域地域によっても解釈や教授内容に若干の違いが生じる。『尋常小学国語読本』の読み方教授において、地域による違いを描出することは、従来は資料の制約上難しかった。本研究課題においては、こうした困難点を(部分的にではあれ)克服したものとなっている。 大正後期から昭和初期の国語教授は、中央集権型官製カリキュラムに拠って形成されていたと言われている。しかし、中央から遠く離れた長崎県対馬の地で(一部分であれ)中央集権型官製カリキュラムに風穴を開けるような、地域独自の解釈が取られていたことが明らかとなった。 「日鮮の融和」という独自の教育目標を掲げた嚴原尋常高等小学校編纂『小學校讀方教授細目』の試みからは、特に朝鮮に題材を取った教材に主体的読みの準備が施されていた。また、水産業が対馬島の主産業であることもあって、漁業関係の教材について具体的・発展的な読み方指導がなされていた。具体的には「京城の友から」(巻10第13課)、「捕鯨船」(巻10第22課)、「朝鮮人蔘」(巻8第10課)、「鯉のぼり」(巻5第6課)、「まぐろ網」(巻12第15課)といった教材を取り上げて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心論文となる、安直哉著「昭和戦前期長崎県対馬における小学校読み方教育小考――嚴原尋常高等小学校編纂『小學校讀方教授細目』の考察を中心に――」(『岐阜大学教育学部研究報告=人文科学=』68巻1号、pp.225-234)を発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、国定第三期国語教科書『尋常小学国語読本』所収の有名教材を取り上げて、その教材解釈の変遷と多様性を論じたい。嚴原尋常高等小学校編纂『小學校讀方教授細目』を含めた多数の教授書・教師用書の解釈を比較・検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題研究の経費の多くは古書の購入に充てられている。当該年度は全国の古書市場の探索が必ずしも十分にできなかった。次年度は全国の古書市場を入念に探索して、必要な古書を購入する。
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