研究課題/領域番号 |
18K02577
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
三村 真弓 広島大学, 教育学研究科, 教授 (00372764)
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研究分担者 |
山中 文 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (10210494)
吉富 巧修 広島大学, 教育学研究科, 名誉教授 (20083389)
北野 幸子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (90309667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音楽科固有の資質・能力 / ふしづくりの教育 / 教育課程 |
研究実績の概要 |
2018年度は、まず汎用的に育む資質・能力と音楽科固有の資質・能力との関連を明らかにするために、複数の文部科学省研究開発指定校のカリキュラムの比較分析を行った。いずれの研究校においても、提示された音楽科の資質・能力は教科の本質に根付いており、音楽科は汎用的資質・能力育成の手段とはなっていない。また、どの教育課程においても、新領域・新教科と各教科における学習方法に共通性が見られ、両者を繋ぐ根幹となるのは学習方法の開発であることがわかった。 次に、優れた音楽指導法や音楽教育法の特徴と効果を明らかにするために、「ふしづくりの教育」に関する歴史研究と実践研究を行った。昭和40年代から50年代初めにかけて行われた岐阜県古川小学校の「ふしづくりの教育」の教育課程は二本立て方式であり、教科書教材を学習するA活動と、「ふしづくり一本道」カリキュラムによるB活動は、根幹で繋がり、B活動は確実にA活動に寄与していることが明らかとなった。また、昭和54年に開設された高山短期大学附属幼稚園において、「ふしづくりシステムによる幼児の音楽リズム」が導入された。その特徴は、多彩な遊びを中心としていること、人とのやりとりを重視していること、遊びを通して基礎的な音楽能力を獲得させていること、言葉を使った即興的なふしづくりをすることによって実生活と繋がった主体的な活動となること、幼児教育と小学校の接続を意識したカリキュラム及び実践であること等であった。一方、実践研究として、幼稚園、小学校、特別支援学校において、「ふしあそび」「ふしづくりの教育」の実践を行った。いずれも、子どもたちの音楽的な成長、及び人間形成に効果がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は大きく4つある。第1の目的は、音楽科固有の資質・能力とは何かを、諸外国のカリキュラムと指導法及びわが国の研究開発指定校のカリキュラムから検討することである。2018年度は、研究開発指定校のカリキュラムを比較分析した。第2の目的は、子どもの音楽的感覚や音楽能力の発達状況を把握し、発達至適時期を解明することである。2018年度は、小学校6年生の授業実践から、子どもたちがそれまでに獲得した音楽的感覚や知識・技能を活かしながら、他者の価値観を理解・受容することによって、新しい価値観をどのように育んで行くのかを明らかにした。第3の目的は、優れた音楽指導法や音楽教育法に関して事例等からその特徴と効果を明らかにし、系統的な音楽カリキュラムと指導法を開発することである。2018年度は、「ふしづくりの教育」の特徴と効果を明らかにした。第4の目的は、実践を通してその効果を検証し、指導のプロセスにおいてどのような資質・能力が育まれているのかを明らかにすることである。2018年度は、幼稚園、小学校、特別支援学校で実践を行い、その効果を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
第1の目的の音楽科固有の資質・能力とは何かに関して、次年度以降は諸外国のカリキュラムを検討する。第2の目的の子どもの音楽的感覚や音楽能力の発達状況を把握し、発達至適時期を解明することに関して、保育園・幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校の音楽活動・音楽科授業の観察を通して、発達段階の特徴を明らかにする。第3の目的の優れた音楽指導法や音楽教育法の特徴と効果に関して、ひきつづき「ふしづくりの教育」の研究を行うとともに、乳幼児の優れた音楽活動の観察・分析を行う。第4の目的の実践を通してその効果を検証することに関して、次年度以降は、乳幼児も含めて、実践を拡大する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に国際学会で研究発表するため、旅費を確保した。当該年度での国際学会発表の申し込みは、前年度までであったため、当該年度では発表できなかった。
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