研究課題/領域番号 |
18K02578
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
宮下 晃一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (90192765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中学校 / 技術 / ものづくり / 設計 / 材料加工 / 3D-CAD / 電動工具 |
研究実績の概要 |
中学校技術の授業に,3D-CADによる設計と電動工具やデジタル加工機による材料加工を導入することによって設計・製作過程の効率化を図る新しいものづくり教育手法の開発を目指している。そこでH30年度は,3D-CAD操作の自習用教材の開発,ドローンを製作する授業の開発,本立てのセミオーダーメード設計と電動工具を使った製作方法の授業化に取り組んだ。 まず開発した3D-CAD教材は,3D-CADが操作されているPC画面のキャプチャとテキストによる説明を併用して,CADの初学者が理解しやすいよう編集されている。この教材を,eラーニングで実施された大学授業と対面で実施された社会人向け公開講座に導入した。その結果,eラーニングならびに対面のどちらの授業形式においても,ほとんどの受講者がほぼ自力で3D-CAD操作を習得できることが分かった。 次にドローンを製作する授業の開発については,制御系の検討,機体の設計と製作方法の検討,プロペラの製作方法と性能測定方法の検討を行った。中学生向け教材であることを考慮し,汎用マイコンボードであるラズベリーパイとDCブラシモーター(マブチモーター)による駆動を目指した。機体の設計・製作では,レーザーカッターでMDF材を切断する方法で,軽量かつ十分な剛性を実現することを目指した。プロペラ製作では3Dプリンターによる製作方法とレーザーカッターによる製作方法を比較した。さらにキッチンばかりを用いてプロペラの揚力を測定する方法を開発した。 また本立ての製作においては,基本的な本立ての形状の3D-CADデータを教師から生徒へ配布し,生徒は3D-CADを使ってその寸法や形状を修正することによってオリジナルの本立てを設計する方法を試行した。さらに木材の切断や穴開け加工,木ねじによる組み立てを,電動工具を使って行う方法を試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3D-CADを用いた設計の効果的な導入方法と教育効果の検証に関して,申請時における1年目の計画では中学生向けテキストの開発と評価を行うことになっていた。それに向けた第1段階として学生・社会人向けのテキストを完成させ評価を行った。今後さらにテキストの内容を精選するとともに,中学校技術で扱いやすい事例を取り上げながら,中学生向けのテキストに仕上げていく計画である。 機械による材料加工の効果的な導入方法と教育効果の検証に関して,本立て製作を一例として取り上げ検討した。まず3D-CADを使って部品図と組み立て図を簡単に書く方法を検討した。次に部品図に従って,電動丸鋸を使って材料の切り出しを行い,時短効果と加工の正確さ,安全性について評価した。次にオービタルサンダーを使って材料の表面仕上げと面取り加工を行い,時短効果と仕上げの美しさ,安全性について評価した。接合に木ねじを使うこととし,ドリルドライバーを使って下穴加工,ザグリ加工,木ねじの締め付けを行い,加工の容易さと時短効果,安全性について評価した。なお,中学校教員による授業方法の評価ならびに授業方法の完成には至らなかった。 設計・製作・評価を繰り返す授業の効果的な実施方法と教育効果の検証に関して,ドローン製作を一例として取り上げ検討した。まずラズベリーパイを使ってDCブラシモータの回転を制御する試作を行った。次に機体について,3D-CADを使って設計し,レーザーカッターを使ってMDF材を加工し試作した。また様々な形状のプロペラを設計・製作・評価するため,3Dプリンタで製作する方法とレーザーカッターで製作する方法を検討するとともに,プロペラが発生する揚力を測定する方法を検討した。なお,教育効果の検証には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
3D-CADを用いた設計の効果的な導入方法と教育効果の検証に関して,中学生向けの3D-CADテキストを完成させ,中学校教員による評価の後に授業実践を行い,研究成果につなげる計画である。 機械による材料加工の効果的な導入方法と教育効果の検証に関して,中学校技術の授業に導入することを推奨できる機械を,作業効率,教育効果,安全性の観点から選定する。そして,それらの機械を使って実施する新しい授業方法を開発し,中学校教員による評価の後に授業実践を行い,研究成果につなげる計画である。 設計・製作・評価を繰り返す授業の効果的な実施方法と教育効果の検証に関して,材料加工とエネルギー変換に関わる授業を想定して,3D-CADを使った設計と機械による材料加工,ならびに評価を繰り返す授業開発を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は中学校における新しい授業開発を目的としているが,今年度はまず大学における先行的な研究を通して授業内容を検討した。そのために中学校における授業実践の段階で必要となる3Dプリンタや電動工具などの購入に至らなかった。さらに3Dプリンタの出力に長時間を要する問題があるため,学校現場での利用については慎重に検討している。 次年度は中学校における授業実践を計画しており,そのために必要な機材を購入し,研究を実施する予定である。
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