本研究は,中学校技術のものづくり教育について将来に通用する魅力的な授業内容を開発し,その教育効果を検証することを目的としている。今年度は次の研究を実施した。①中学校技術科の授業で活用できる教具を教員自身が設計し,レーザーカッターを使って製作した。製作した教具は,カム機構やスライダークランク機構の模型,空圧で作動するショベルカーの模型。デジタルものづくりに余り慣れていない教員が,3D-CADとレーザーカッターを使って,比較的短時間で複雑な教具を作成できることを確認した。②技術教員と他教科の教員とが協働してデジタルものづくりに取り組み,数学,理科,家庭科で使うための教具を比較的短時間に製作できることを確認した。③中学生を対象として,フリーのドローソフトinkscapeを使った作図とレーザーカッターによる出力を行る研究授業を実施した。その結果,生徒は1時間程度の練習の後inkscapeを使って自分が描きたい図形を描けるようになった。それらの図形をレーザーカッターでビスケットやペン立てなどに彫刻した。生徒のデジタルものづくりへの興味・関心は極めて高いことを確認した。④中学校技術の授業において,フリーのドローソフトinkscapeを使って等角図を描く授業を実施した。この授業を通して中学生にinkscapeの使い方を習得させるために要する時間を把握することができた。⑤中学校技術において広く行われている手作業での木材加工による本立て製作を,レーザーカッターで実施することを想定して,適切な材料や接合方法,構造を明確にした。⑥レーザーカッターによる加工の様子を遠隔地にある中学校の教室から観察できるよう,臨場感あふれる映像配信や撮影方法を確立した。
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