研究課題/領域番号 |
18K02583
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
永野 昌博 大分大学, 理工学部, 准教授 (50530755)
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研究分担者 |
北西 滋 大分大学, 理工学部, 准教授 (90552456)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユネスコエコパーク / 生物多様性 / ESD / 環境DNA / 市民協働 |
研究実績の概要 |
ユネスコエコパークが目指す「生態系の保全と持続可能な利活用の調和」を実現するためには、研究者・教育者・ステークホルダーの協働による継続的な生物多様性の調査、ならびに、「地域の生物多様性への関心=郷土愛」を醸成させていくための地域に根差したESDの教材開発が不可欠である。しかし、そのモデルとなる研究は少ない。そこで、本研究では、祖母・傾・大崩山ユネスコエコパークを中心とした広域かつ大人数による生物多様性の保全活動と上記のESDを継続的に発展させていくための研究者・教育者・ステークホルダーのヒューマンネットワークとGISデータベースの開発を研究基盤として構築し、さらに、その基盤を活用したESD教材の開発のモデルを実践・理論の両面から構築することを目的として行う。 昨年(初年度)は、①ヒューマンネットワークの構築、②生物多様性ICTシステムの設計、③市民協働生物多様性調査の実践を中心に行った。二年次である本年度は、前年度の①、②、③の研究の継続・発展に加え、④生物多様性情報の収集・整理、⑤市民協働ESD教材の設計・実践、その効果の検証について実施した。 ①と④は、祖母・傾・大崩山ユネスコエコパーク学術委員会、ならびに、大分県自然環境学術調査会と連携を図り、それらの方々が保有する生物多様性情報の収集・整理を行った。②は、既存の生物多様性ICTシステムを検証し、かつ、本エコパークの現状・課題を検証し、それらの分析に基づいたシステムを設計し、プロトタイプの開発まで行った。③環境DNAを用いた市民協働生物多様性調査のプロトコルを設計し、予備的な現地調査を実施した。⑤と⑥は、本エコパーク推進協議会と協働して、地域の小学生を対象に実施した。実施日が雨であったため、計画していた野外活動は実施できなかったが、屋内で実施可能なESDを実践し、それに関するアンケート調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、3月に予定していた在野研究者を対象とした生物多様性ICTシステムの操作方法の講習会ならびにこれに関するアンケート調査が実施できなかった。また、8月に計画していた小学生を対象としたESDの実践の当日、大雨により野外活動ができなかった(雨天プログラムを実施したが、期待する成果を得ることができなかった)。これら2つの計画・アンケート調査が未実施となったため、アンケートの分析、および、それに基づいた計画・設計が遅れている。また、新型コロナウィルスの影響により、2月から3月に予定していた環境DNAを用いた市民協働生物多様性調査に関する実験を実施することができなかった。この実験結果が、次年度以降の研究計画を大きく左右するため、今後の研究の遅延が危惧される。 しかし、本研究の核となる生物多様性情報の収集・整理、生物多様性ICTシステムのプロトタイプの開発においては一定の成果が得られたため、次年度以降の努力により、今年度の遅延分は取り戻すことができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、①生物多様性情報の収集・整理、②市民協働生物多様性調査の実践、③生物多様性ICTシステムの設計・開発、④生物多様性研究のヒューマンネットワークの構築・運営、⑤市民協働ESD教材の設計・実践、⑥効果の検証・マニュアル化・理論化・モデル化を目指している。 上記①②③④は、祖母・傾・大崩山ユネスコエコパークの事業と連携を図り、より実践的なシステムの構築を進めてきた。今後もこの連携を深めていく。さらに、現在、大分県ではレッドデータブックの見直し調査が実施されており、本エコパークエリアもその対象地域であり、調査内容の類似点も多いため、このレッドデータブックの調査活動との連携も進め、より幅広い活動に適応・波及できる①②③④の研究成果を得たいと考えている。 また、②においては、新たな生物多様性調査法として環境DNAを用いたサンショウウオ類の分布調査の手法開発について推進していく方針である。⑤においては、これまでは地元小学生を対象としたESD教材の開発を念頭においていたが、新型コロナウィルスの影響で、小学生・小学校との連携が困難になることが予想されるため、研究代表者の授業において大学生を対象としたESD教材の開発にシフトする。⑥においては、これらの視点からのユネスコエコパークにおけるESDの事例を再検証し、当地ならではの市民協働生物多様性調査と連動したESDプログラムを考案・実践していく方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は,新型コロナウィルスの影響で、2月と3月に実施予定であった以下の研究が急遽中止となり、それに伴い、以下の予算執行を取り止めたため。●物品費…市民協働生物多様性調査(環境DNA分析)の実験で使用する機器、試薬等。●旅費…67回日本生態学会大会(名古屋3月4日~8日)が中止となり、本研究代表者と分担者の2名分の旅費。●人件費・謝金…今年度収集した生物多様性情報を開発した生物多様性データベースに入力してもらうための謝金。●その他…上記67回日本生態学会大会の参加費、環境DNA分析にかかる機器使用料等。 使用計画は,新型コロナウィルスによる行動規制が解除(緩和)された後,今年度実施予定であった環境DNAの実験や生物多様性情報のデータベース入力作業ならびにそれに伴う予算を執行する。また,次年度は本年度は行かなかった環境教育学会,ESD学会,環境DNA学会にも参加する。
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