本研究の目的は、祖母・傾・大崩ユネスコエコパークにおいて、①生物多様性情報の収集・整理、②市民協働生物多様性調査の実践、③生物多様性ICTシステムの設計・開発、④市民協働ESDプログラムの設計・実践、⑤市民協働ESDプログラムの効果の検証・モデル化である。 上記①②③は、祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク学術調査研究事業ならびに大分県レッドデータブック調査事業、ならびに、在野の生物調査団体と連携を図り、より実践的なシステムの構築を進めてきた。④⑤は新型コロナウィルスの影響で、令和4年度まで実施できなかったが、今年度は大学生を対象としたESDプログラムを在野の研究者とともに設計・実践し、その効果を検証した。 上記①②は祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク内の哺乳類、爬虫類、両生類、植物の調査を行い、当地域の生物相の希少性と多様性、ならびに、ニホンジカによる生態系の攪乱を明らかにした。③の研究において開発した生物多様性ICTシステム(データベース)に、①②の研究で蓄積したデータを入力するとともに、より簡易的で利便性の高いものにシステムをカスタマイズし、絶滅危惧種や天然記念物等の調査にも活用できるものを開発した。④⑤は祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク内の植物相・哺乳類相調査を行い、そのデータ解析とワークショップを通じて、ニホンジカが生態系に与える影響について考えるESDプログラムを開発・実践した。その際の事前・中間・事後のアンケート調査により、高いESD効果が証明された。また、このプログラムのモデル化・普及のため、学会発表(2024日本生態学会ほか)、論文発表(投稿中)を行った。
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