研究課題/領域番号 |
18K02586
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
東 宏行 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (00425373)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不登校 / 教育支援センター / 適応指導教室 / 教師と保護者の連携 |
研究実績の概要 |
2019年度まで実施していた現地調査を継続し、全国の教育支援センター(適応指導教室)や民間の中間施設等でのフィールドワークを実施する予定であった。しかしながら、2020年度に続き、新型コロナウィルス感染症が収束せず、それら中間施設の活動が制限された上に、現地調査はわずかしか行うことができなかった。それらを含め、継続して資料収集を行っている神奈川県、沖縄県、埼玉県の中間施設各1か所、名古屋市にある民間の中間施設1カ所については、メール、Zoom(Online)等を通じて情報収集を行い、年間活動報告書の収集ができた。 特に2か所の教育支援センター(適応指導教室)には直接伺って、コロナ禍での活動制限の様子を含め、保護者の不安がどのような様子なのかを聴取することができた。また、教育支援センター等で不登校児童生徒の支援を担当している教員や、過去に担当した教員が、保護者との連携において特徴的な視点を獲得しているという仮説の検証に有益な視点を整理することができた。不登校という学校臨床問題において、中間施設での教育活動には、保護者と教師の連携に係る重要な視点獲得の契機になるものが含まれていることが想定される。 一方、本年度は保護者の側の意識に関する研究も進めた。埼玉県が実施した「埼玉青少年の意識と行動調査」を資料にして、保護者の意識や児童生徒の自己肯定感との関連も分析した。その成果の一部を「コロナ禍の中を生きる 子ども・若者 と自己肯定感 -3つの年齢層の比較から見えてくる課題」として公表した。保護者の意識を明らかにすることによって、中間施設が学校と家庭の間で、どのような役割を求められているのかを見いだすための視点を整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に続き、新型コロナウィルス感染症拡大によって、実地調査をすることができた中間施設が、量、質ともに限定的になった。そのため、当初予定していた研究方法に加え、各中間施設が記録した様々な年報、年間活動報告書類の収集を進めた。また、公的機関による各種調査を活用し、制度上の特徴をまとめることで、保護者と教師の連携が展開している実態や事例を明らかにすることに着手した。さらに、ONLINEや電話、メール等の手段でも収集可能な資料を蓄積中である。当初の研究計画とはやや異なる方法になるが、こうした方法で研究を継続した。 研究対象としていた中間施設の活動そのものが、感染症対策で活動を制限しており、行事等の特徴的な活動における教師と保護者の関係を分析することはできなかった。一方、コロナ禍において、各種調査が活発行われていることに着目し、教師と保護者の意識調査、子ども・若者の意識調査から明らかにできることを模索した。その結果、コロナ禍という時期的背景はあるものの。保護者の意識や学校への期待感については一定整理することができた。この意識や期待感が教師との連携を考えるための視点になると考えられる。この研究成果については、分析結果の一部を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響を考え、今年度と同様に、現地調査(実地調査、参与観察、聞き取り調査)に関しては最小限の実施としながら、資料収集を進める予定である。一方、各中間施設の様々な年報、年間活動報告書類を活用し、制度上の特徴をまとめていくことを軸にしていく。これにより、保護者と教師の連携がどのように展開しているのかを、制度面からのアプローチによって、一定明らかにすることができる。今年度と同様に、特に中間施設に配置された教員(専任教員と仮表記)について、どのような立場で配置されているのか、スタッフとの関係と専任教員の役割、担任等の学校教員と専任教員の関係を中心に制度面からアプローチした分析を進める。 また、コロナ禍において活発に実施された各種意識調査の分析も継続していく予定である。今年度は保護者の意識を主な対象として分析を進めたが、教師の側の意識については不十分であった。今後、教師の側意識や学校臨床問題(特に不登校)に特化して、各種調査の分析を進めて行く。加えて、中間施設での専任教員としての経験が保護者と教師の連携に与えた影響についても、メールやONLINEを活用し、可能な範囲でインタビュー等を通じて明らかにしたい。この分析を通じて「不登校という学校臨床問題における、中間施設での教育活動を通じた、保護者と教師の連携に係る視点獲得」を課題とした研究成果が期待できると考える。 一方感染症拡大の影響が大きく減少した場合は、実地調査、参与観察、聞き取り調査は、可能な範囲で実施し、連携プロセスを明らかにする分析は続けたいと考えている。特に、次の3点は重要な研究対象になる。1.中間施設における各種行事における教師と保護者の連携 2.中間施設の専任教員を経験した教師の意識変容(保護者との関係) 3.不登校の子どもを持つ保護者による自主的な支援活動における教師のかかわり。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大により、研究に必要な現地調査がわずかしか実施できなかったため、調査費用として想定していた経費を使用しなかった。現地調査ができたものについては、所属施設から支給されている定期券の範囲であったり、他の用件と兼ねて訪問したため、旅費は不要であった。またメール、電話、ONLINE等は所属施設のものを使用したため、経費はかからなかった。次年度、感染状況が収束に向かえば、交通費、旅費等に相当の経費が必要となるため、次年度に使用したい。
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