研究課題
最終年度は、子どもがどのようにしてベイズ理論にしたがった確率判断をできるのか、18世紀からこれまでの研究を展望した。以下が概要である。まず、18 世紀の啓蒙思想期から1960年代頃までは,不確実な状況下における人間の判断は,概ね合理的であり、ベイズ理論は、実際の人間の判断を表現するものと考えられていた。しかし1970 年代頃から,Tversky & Kahneman に代表されるヒューリスティックス&バイアスアプローチによって,基準率無視やランダム系列の誤認知など、人間の非合理性が示された。1980年代後半以降は、研究パラダイムを実験室から現実的で生態学的妥当性の高い文脈への移行が重視され、1990年代には生態学的妥当性に関する議論がベイズ推論(基準率無視)の中心となった。そしてベイズ課題を確率表記(%)ではなく、頻度表記(度数)で表すと、課題の成績が上がるため、自然抽出による頻度表記(自然頻度表記)を用いれば子どもでもベイズ推論課題が解けるとする説と、頻度を問う課題でもバイアスが見られるので表記の影響は小さいとする説が対立した。そして様々なバイアスを,判断対象の標的である属性の評価を,より心に浮かびやすい別の属性で代用する属性代用のメカニズムにより説明する Barbey&Sloman (2007)の二重過程理論が主流になってきた。ベイズ課題を解決する際には、「入れ子状集合の関係を明瞭化するため、属性代用である図を用いると基準率無視が減らせる。二重過程モデルでは,基準率無視は,課題内の集合の構造を適切に表象できないためであり、ベイズ推論課題に内在する入れ子状集合の構造を表象できると、基準率無視も減少する。したがって、中学生と高校生がベイズ課題の属性を構造化して樹形図で代用表彰するには、樹形図の論理的意味を理解できるよう、数学の授業に教授介入することが重要である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
International Journal of Creativity in Music Education: Special Issue Music Education in New Normalcy: A Creative Experience
巻: 9 ページ: 55-65