本研究は、初等・中等教育段階の女子の理系能力を伸長し、理系への進路選択を促進する方策の検討・提案を目的としていた。そのために、まずは過去に実施された学校教育の内部および外部における取組の内容と成果を横断的・総合的に分析した。また、女子の理科学習の現状を調査し、最新の問題点を解明した。さらに、諸外国における近年の方策を参考に、学校理科教育に導入可能な方策を開発し、その有効性を検討した。 コロナ禍により、開発した方策の実践が限定的になったが、最終年度の2022年度には、方策を導入した介入期間と、介入できなかった期間の比較分析をし、授業への介入によって、女子の理科学習の促進や男女差の縮小が示唆された。また、研究期間全体を通じて、理科学習の男女差や女子の理科学習には、主として次のような特徴が見出された。第一に、理科学習に対する意識の男女差は、15年前よりも部分的に縮小している。第二に、理科と日常生活との関連性の強調が、女子に有効な可能性がある。第三に、授業の内容や展開によっては、女子も物理領域を意欲的に学習できる。第四に、電気単元以外にも女子の理科離れの要因が存在する。第五に、学習内容に対する女子の好感度の低さの原因は、理解度の認識以外にある。第六に、理科へのポジティブあるいはネガティブなイメージには男女差は見られず、理科のイメージに関して女子に特有の問題があるとはいえない。第七に、理科好きの女子は、男子よりも多様な観点から理科に魅力を感じている。これらの特徴に基づき、海外の知見も参考にし、日常生活との関連性や女子の興味・経験に即した教材、体感・視覚的変化を利用した実験等の方策を開発し、その効果を検証した。 以上のことから、女子の理系能力の伸長に向けた学校理科教育の改善視点が明確になり、本研究の目的はほぼ達成されたと考える。
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