研究課題/領域番号 |
18K02600
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研究機関 | 鹿児島国際大学 |
研究代表者 |
飯田 伸二 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (60289650)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フランス / 義務教育課程 / コレージュ / 文学教育 / 学習指導要領 / 知識・技能・教養からなる共通基盤 / 国語教育 / フランス語教育 |
研究実績の概要 |
平成31-令和元年度はフランス義務教育課程の第2学習期(日本の小学1-3年に相当)及び第3学習期(日本の小学4-6年に相当)の学習指導要領のフランス語に関連する箇所の全訳を完成させ,勤務先の大学紀要に発表することができた。すなわち学習期ごとの目標・意義を定めた第1部,義務教育課程修了時に国が全生徒に保証する学力レベルを定めた「知識,技能,教養からなる共通基盤」を構成すると5つの領域における各科目に期待される役割・貢献を定めた第2部の全訳,さらに各科目の学習内容,教授方法及び到達目標を定めた第3部のフランス語に関する章の全訳である。 この作業により小学校1年からコレージュ1年までの国語教育を理解する上で不可欠の資料の日本語訳を終えたことになる。またコレージュ2年から4年(最終学年)に関する学習指導要領のフランス語に関する部分も全体の下訳は終了している。夏には発表できるよう訳文の推敲を進めているところである。 また,『サザエさん』における学歴をテーマにした論考をフランスの査読付き社会学雑誌『エルメス』に寄稿した。この論文により,高学歴化が進む1950年代から70年代前半の日本において,学歴による階層化が大きく進行し,その影はこの時代の日本をを代表する4コマ漫画にも深く影を落としていることが明らかになった。さらに1970年代半ばからの日本の高学歴化と雇用形態の不可逆的な変容が,いかに日本の学校観に影響しているかを『ドラえもん』を例に分析し,大連外国語大学で講演した。 特に70年代半ばは,フランスにおいても戦後の庶民層の高学歴志向,また学歴による階層化の進行に対応すべく,〈統一コレージュ〉という名で総称される一連の制度改革が実施された時期でもある。この意味において,上記の論文・講演の準備は日本とフランスにおける高学歴化を比較検討できる視座を獲得する貴重な機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この2年間でフランス義務教育課程におけるフランス語=母国語教育の根幹をなす基本資料を精読し,日本語に訳す作業を進め,ほぼ順調に完遂することができた。すなわち「知識・技能・教養からなる共通基盤」(2015年3月31日付政令)及び第2・3・4学習期の学習指導要領(2018年7月26日付『官報』)の第1部,第2部の全訳及び第3部のフランス語教育に充てられた章の全訳である。 また,フランスにおける母国語教育の調査・研究で得た知見を活かしながら,フランス,中国で研究成果を発表できたことは,当初の研究計画では予定されていなかったこととはいえ,研究成果の一部を海外に向けて発信し,研究対象に対し新たな視点を得るという点では極めて貴重な機会であった。 一方,フランスでの資料収集,聞き取り調査を春休みに予定していたが,コロナウィルス感染症対策で,フランス国内の大学,図書館が閉鎖されたため,出張を急遽中止せざるを得なかった。このために,資料,特に一般には販売されていない教員向け教授資料の収集ができなかった。また,近年特に緊密に連絡を取り,研究会の企画,研究書の発行を行っているボルドー大学=アキテーヌ高等師範教育学校の研究スタッフとは,出張中に面談し,フランスの教育事情・諸問題について意見交換する予定であったが,叶わなかった。 さらに,本務校におけるコロナウィルス感染症対策の立案,実施に多くの時間を割かねばならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究の最終年度である。過去2年の研究成果,特にフランスの現行学習指導要領の紹介・翻訳を元に,フランス語=国語のコレージュ用教科書の分析及び義務教育課程修了証(以下「DNB」)試験の検討を中心に研究を進める。 教科書分析では以下の問題点を中心に研究を推進する。1)文学・芸術的教養を養成するためにどのようなテクスト・作品・イメージが採録されているか,2)母国語教育の両輪ともいえる言語の学習と文学・芸術的教養の養成はどのように関連付けられているのか,3)また,その関係性はどのような手段で担保されているのか,4)ギリシア・ローマ時代の言語・文化はフランス語=国語教科書の中にどのように紹介されているか,5)第3学習期である小学校4・5年から同学習期最終学年であるコレージュ1年との一貫性は教科書の構成にどのように反映されているのか。 DNBについては以下の点を中心に研究を推進する。1)新カリキュラム施行によって,DNBの構成,内容にはどのような変更がもたらされたのか。すなわち受験者に要求される知識・技能・教養に変化はあるのか。2)DNBに課されているイメージの学習については,どのような問題が課されているのか。3)また,その問題を通じ,受験者にどのような能力を求めているのか。 こうした研究を推進するには,フランス現地での資料収集,関係者への聞き取り調査を実施することが望ましいのは言うまでもない。しかし,コロナウィルス感染症の状況によってフランス出張が困難な場合は,文献による調査によって代替する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月にフランス(パリ,ボルドー)への出張を予定していた。しかし,コロナウィルス感染症拡大のためにフランスの公共図書館,大学及び付属施設が閉鎖されたため,急遽取りやめにせざるをえなくなった。 状況が許されば2020年夏季休暇中にフランスで資料収集,聞き取り調査を実施予定である。それが叶わない場合は文献資料の収集によって代替する。
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