研究課題/領域番号 |
18K02600
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研究機関 | 鹿児島国際大学 |
研究代表者 |
飯田 伸二 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (60289650)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前期中等教育 / 文学教育 / 母国語教育 / 前期中等教育修了証書 / フランス / コレージュ / 義務教育課程 |
研究実績の概要 |
令和3年度は主に教科書の分析に取り組んだ。具体的には17世紀に活躍したフランスの国民的劇作家モリエールが教科書でどのように扱われているのか,調査を開始した。教科書の入手が困難な時代についてはラルフ・アルバネーズ『共和国の学校におけるモリエール』などの先行研究を参照した。また,さらなる教科書の分析として,安定して大きなシェアを獲得しているアシェット出版を代表する教科書を主要コーパスとし,教材として採用されている文学作品等について,教科書の章立てに沿った一覧表の作成を開始した。さらに,イメージ教育に使用されている画像・映画作品,イメージに付されている設問・課題等について調査をした。 もう一つの主要な研究課題である前期中等教育修了国家免状試験は,同免状が制定された1987年以降の制度改革に関する政令,省令などの公的文章の収集,分析をおこなった。とりわけ2017年からはイメージ分析に関する設問が,国語の試験の中に新たに加えられたため,この点については集中的に調査した。さらに,前期中等教育修了認定試験問題の関連資料を入手し,問題の分析に着手した。フランス国内の政治情勢に連動する形で,同免状試験は2017年,2018年に相次いで重要な制度改革が実施された。,また,2020年にはコロナ感染症拡大防止のため,筆記試験は実施されず,平常点のみで前期中等教育修了の認定が行われたことから,近年の同試験の動向に関する論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの4年間で,義務教育課程のカリキュラムの根幹をなす「知識・技能・教養からなる共通基盤」及び第2学習期(小学1年から3年),第3学習期(小学4・5年及びコレージュ1年),第4学習期(コレージュ2年から4年)のカリキュラムを訳出した。また,現行カリキュラムの国語における文学教育では価値の教育,文学の倫理的側面が重視していることも報告した。 また,教科書の分析及び前期中等教育修了認定試験に関する文献調査も進めている。 しかし,海外調査が実施できなかったため,昨年度は具体的な研究業績を発表することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
近年,前期中等教育修了の認定方式に重要な変更が見られる。この変更は,義務教育課程のあり方に対するコンセプトの変容を前提としている。認定方式がどのような義務教育課程観に支えられ,変更されたのか。国語に関する試験・評価方法は具体的にはどのように変更されたのかを解明する。 また,国語教科書の内容(再録されている文学作品,文章に付されている設問,イメージの学習にさかれているスペース,教材)についての調査・研究を進める。イメージの分析は1970年代後半から,国語教育の構成要素になってはいたものの,この学習テーマに特化した教員研修がなされることもなければ,イメージの学習成果が正式な試験という形で問われることはなかった。 しかし,2017年のより前期中等教育修了認定試験でも,イメージに関する設問が出題されることになった。当然,こうした変更は教科書の編成にも重要な変更を生み出すはずである。 これらの問題についての調査・研究により前期中等教育における国語教育の新たな展開を可能な限り記述・分析することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査が実施できなかったため次年度使用額が生じた。今年度は出入国の規制が緩和される方向との報道がなされているので,可能な限り早期に海外調査を実施する予定である。
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