研究課題/領域番号 |
18K02603
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
西野 真由美 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (40218178)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 道徳科 / カリキュラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、学校における道徳教育カリキュラムの内容について、学習指導要領に示された「内容」の見直しと構造化に向け、内容構成の在り方を理論的・実証的に検討し、次期学習指導要領改訂における「内容」の見直しに必要な基礎資料と理論的根拠に基づく内容構成の選択肢を提供することである。この目的を達するため、本研究では、A.道徳教育の内容構成に関する理論的歴史的研究(道徳哲学・徳倫理学・カリキュラム論の理論的研究および戦前・戦後を通じた我が国の道徳教育の内容構成の変遷に関する歴史的研究)、B.諸外国の道徳教育カリキュラムにおける内容構成の動向調査(比較教育学的視点)、D.道徳教育のカリキュラム・マネジメントに関する国内学校の実際調査・先進校における研究開発の現状分析(実践事例分析)を行うこととしている。これらの研究課題のうち、平成30年度は、以下の研究を実施し、成果を得た。 A.理論的研究については、英米を中心とする徳倫理学の動向を調査し、共有価値としてどのような徳が重視されているかについて傾向を分析した。また、我が国の歴史的変遷については、戦前の修身科国定教科書における内容構成の変遷をまとめ、戦後の学習指導要領の内容構成との比較を行った。 C.国内の実践に関する調査では、文部科学省の研究開発学校で道徳教育に関わる教育課程の開発を研究課題に掲げている学校の研究成果を収集し、これらの学校における学習内容の構成の分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で実施する研究課題は、A.道徳教育の内容構成に関する理論的研究(道徳哲学・徳倫理学・カリキュラム論の視点)・戦前・戦後を通じた我が国の道徳教育の内容構成に関する研究の総括(教育史的視点)、B.諸外国の道徳教育カリキュラムにおける内容構成の動向調査(比較教育学的視点)、C.道徳教育のカリキュラム・マネジメントに関する国内学校の実際調査・先進校における研究開発の現状分析(実践事例分析)である。 平成30年度は、これらの課題のうち、AおよびCの課題を中心に実施し、それぞれについて、成果と次年度に向けた課題が得られた。Bの諸外国のカリキュラムの内容構成に関する調査については、イスラム圏のUAEにおいて新たに道徳科を導入するなど、特に新たなカリキュラム改革がみられた国に関する情報を断片的に入手しているが、諸外国のカリキュラムの比較分析は、次年度の中心課題として取り組む予定である。 以上のことから、平成30年度の研究は、おおむね予定通り進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、以下の三つの視点から研究を進める。 A.道徳教育カリキュラムの内容構成に関する理論研究:徳倫理学の今日的動向を分析し、道徳教育の内容構成原理の精緻化に努める。また、世界的に着目されている非認知能力と道徳教育との関連性を明らかにし、非認知能力を含めた内容構成原理を検討する。 B.道徳教育カリキュラムの内容構成に関する国際比較:アメリカ、シンガポール、オーストラリア、イギリス、フランスなど、これまで教育改革の動向を追跡してきた国に加え、東南アジア、UAE(イスラム圏)など、新たに道徳教育を導入した国の動向を重点的に調査し、国際的な動向を比較分析する。資料収集と諸外国研究者への聞き取り調査のため、アジア太平洋道徳教育学会に出席し、各国研究者と協議を行う。 C.学校におけるカリキュラム・マネジメントに関する実践的研究:研究開発学校における道徳教育に関する内容の開発研究の成果を分析し、育成を目指す資質・能力と関連づけてどのような内容が重点的に指導されているかについての動向を明らかにする。分析にあたっては、現在、研究開発学校の指定を受けている学校への質問紙および聞き取り調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成29年度で終了予定であった基盤研究(C)による研究「21世紀型資質・能力を育成する道徳教育カリキュラムの開発と実践に関する研究」について、研究成果のレビューを受けるための国際学会の開催が予定より遅れ、平成30年度4月の開催となった。そのため、同研究を延長し、平成30年度まで実施することとした。この国際学会において、本研究で資料収集する予定であった国際的な動向に関する資料を一定程度収集できたため、平成30年度に予定していた外国調査を実施する必要がなくなった。これにより、平成30年度に使用予定であった助成金について、次年度に使用することとした。 平成31年度には、上で収集した資料を踏まえ、新たな動向が見られるシンガポールへの調査ならびに国際学会(インドネシア開催予定)での研究発表を行う予定であり、この外国出張旅費として、翌年度分と合わせて執行する。
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