本研究の目的は、学校における道徳教育カリキュラムの内容について、学習指導要領に示された「内容」の構造化に向け、内容構成の在り方を理論的・実証的に検討し、次期学習指導要領改訂における「内容」の見直しに必要な基礎資料と理論的根拠に基づく内容構成の選択肢を提供することである。この目的を達するため、本研究では、①道徳教育の内容構成に関する理論的研究(道徳哲学・カリキュラム研究的視点)、②戦前・戦後を通じた、我が国の道徳教育における内容構成に関する研究の総括(教育史的視点)、③諸外国の道徳教育カリキュラムにおける内容構成の動向調査(比較教育学的視点)、④道徳教育のカリキュラム・マネジメントに関する国内小・中学校の実態調査ならびに先進校における研究開発の現状分析(実践的視点)を実施した。 ①については、現代徳倫理学の研究動向に注目し、道徳教育の学習内容となる道徳的諸価値の構造を分析した複数の異なる理論についてそれらの共通性や妥当性、問題点を検討し、論文に取りまとめた。さらに、それらの理論を反映した道徳教育カリキュラムの在り方について、概念型カリキュラム論の研究成果を援用して検討を進めた。 ②については、戦前・戦後の道徳教育の内容構成の変遷を取りまとめるとともに、特に内容の構造化を意識して改訂された平成元年告示版学習指導要領に注目し、改訂の経緯や検討過程について関係者にインタビュー調査を実施した。 ③④については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により計画の実施が困難となり、研究期間を一年間延長したものの、状況の改善がみられなかったため、既存資料を基に諸外国の改革動向を取りまとめた。内容構成の新たな方向として現地研究者との協議を予定していたシンガポールとオーストラリアの調査、国際学会における共同のシンポジウム開催、国内の先進校への訪問調査は上の事情により中止さぜるをえなかった。
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