研究課題/領域番号 |
18K02604
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 義久 弘前大学, 教育学部, 准教授 (80610633)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 形成的評価 / 問題解決型授業 / 机間巡視 / ICTの活用 / 教員養成プログラム |
研究実績の概要 |
授業改善の視点の一つである「深い学び」の実現のためには,問題解決型授業の改善が不可欠である。実際,アンケート調査によれば,多くの日本の教師は,問題解決型の授業を理想のタイプと捉えている一方で,その授業の実施に困難を抱えている現状であることが,報告されている。 問題把握,自力解決,比較検討,まとめという4つの場面を構成要素とする問題解決型の授業を改善するためには,授業前の綿密な教材研究に基づく解法の吟味や予想される反応の吟味が必要であるとともに,比較検討場面の充実を意識して,子どもの自力解決に対する教師の注意深い机間巡視,子どものアイデアの活かし方といった形成的評価の工夫が必要である。これまでにも個に応じた指導のように形成的評価の重要性は認識されているものの,教員養成段階における形成的評価の能力向上を意図した実践的な活動はみられない。 本研究の目的は,数学授業改善のための形成的評価に焦点をあて,教師の形成的評価の能力向上を志向した教員養成プログラムを開発することである。このために,研究の二年次である令和元年度は,授業観察記録データの分析およびレポート課題の分析を踏まえ,以下のことに取り組んできた。 1つ目は,学部授業に用いることができるプログラムの開発である。具体的には,中学校教材である「見えない角」の二等分線の作図を用いたプログラムを開発した。2つ目は,開発したプログラムの実践である。レポート課題において先の教材に関する教材研究を深めさせた上で,実際の授業場面を想定し,この教材を用いた机間巡視の実際を「数学科教材論」という授業の中で,学部学生に行わせることができた。さらに,生徒の実態を考慮することで,比較検討場面の多様な設計が可能であることを経験させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度のターゲットは,これまで試行的に実施していた「教員養成プログラム」を本格的に実施することであった。この点に関しては,順調に進んでいる。 一方,平成30年度は,ICTを活用した観察記録データが順調に蓄積されたが,令和元年度は,集中実習の前後に実施される「恒常的実習」のうちの,前期のプログラムが変更されたため,ICTを活用した観察記録データの蓄積が困難であった。今後のためにも,継続的なデータの蓄積が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に向けては,本年度の「恒常的実習」に関するプログラム変更に対応しながら,ICTを活用した観察記録データを蓄積していく必要がある一方で,コロナ禍により「恒常的実習」を含めた実習全体の実施が危ぶまれているため,こうした状況への対応を検討していく必要がある。また,開発した「教員養成プログラム」を「数学科教材論」の授業だけでなく,他の授業において実施できるように,多様な解決方法が見込める教材の吟味を行っていくことが必要である。
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