本研究の目的は,数学授業改善のための形成的評価に焦点をあて,教師の形成的評価の能力向上を志向した教員養成プログラムを開発することであった。 このために,平成30年度は問題解決型の数学授業において子どものアイデアをとらえることに関する学部学生の実態を,ICTの活用によって記録された授業観察記録から明らかにすることを試みた。この結果,生徒の実態をおおむね把握できる学部学生は多いものの,個別指導や比較検討の設計に向けた観察に課題があることが明らかとなった。 令和元年度および令和2年度は,学部学生の実態を踏まえ,学部授業に用いることができるプログラムの開発を行った。具体的には,中学校教材「見えない角」の二等分線の作図を用いたプログラム,および,中学校教材「星形五角形」を用いたプログラムを開発した。そして,「数学科教材論」や「数学科授業論」の授業の中で実践した。 令和3年度は,教育学部における実践に加え,理工学部における授業においても実践を行った。令和4年度および令和5年度は,中学校教師を対象とした講演(2022年8月)や,むつ市における研修講座(2023年8月)弘前市における研修講座(2022年9月,2024年1月)においては,形成的評価活動を重視した授業展開に関する活動を行った。 開発したプログラムは,(1)多様な解決方法が現れる教材の吟味と実際の想定,(2)「机間巡視」の模擬的な実施と比較検討場面の構想,(3)自己の構想と他者の構想との比較,(4)比較に基づく自己の構想の省察,の過程を含むプログラムであり,学部学生が,比較検討場面の多様な設計を経験できるプログラムであった。生徒の実態を形成的に評価し実態に応じて授業展開を柔軟に変えられる能力の伸長を期待するものであった。
|