本研究は,フランスの学校現場で展開されたピュイゼ理論を活用して,言語表現力育成と連動した食育プログラムの開発を行い,食の場面における感覚語彙の蓄積と表現を通して言語能力の育成に資するか検討を進め,言語表現力育成に向けた食育のあり方を意義づけようとするものである。 最終年度は,開発した食育プログラムを用いて就学前施設における研修を通してプログラムの実行可能性と有効性について確認し,現場の教職員が自ら実施する際の注意点等について情報提供した。また,子どものための味覚教育研究会とともに開発した年間プログラム(視覚や嗅覚,触覚,聴覚への各アプローチ,食べ物の調理加工による変化への気づき等)について,小学生を対象に実施した結果,継続して受講することにより対象者の言語能力獲得に資するプログラムとして有効なだけでなく,対象者が五感を用いて感じ取ったことを言語とは別の表現様式である絵でも表出できる可能性を見出した。 研修会後の振返りから,本プログラムを学校現場で実施していく上で,特に実施者(授業者)の態度や言葉掛け,発問に注意を要することが指摘され,定期的な研修会や指導者養成プログラムの必要性が確認された。更にフランスの味覚研究所(Institut du Gout)が作成したClasses et Familles du Gout"(教室と家庭での味覚レッスン)の翻訳作業を進めることとし,プログラムを開発する上で参考とした味覚教育への理解を深める教材として,今後,普及させていく計画である。
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