研究課題/領域番号 |
18K02621
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
吉川 芳則 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70432581)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 説明的文章 / 批判的読み / 学習指導過程 / 筆者の発想 / 自分の考え |
研究実績の概要 |
説明的文章の批判的読みの実践モデル(初期版)構築に向けて、単元レベルでの学習指導過程モデルの仮設に着手した。広岡(1972)の学習過程の最適化論、吉川(2002)の説明的文章の学習指導過程モデル、森田(2011)の評価読みの学習指導過程モデルを検討し、成果と課題を抽出した。加えて吉川(2017)に示された批判的読みの基本的なあり方の要素との対応を図る形で説明的文章の批判的読みの基本的な学習指導過程モデルを仮設した。さらにモデルをもとに批判的読みを取り入れた先行実践の学習指導過程の分析を行い、モデルの実践開発への活用の可能性を検討した。具体的には以下のようである。 仮設した説明的文章の批判的読みの基本的な学習指導過程モデルは、三読法をベースに第1次は「文章の内容や形式に主体的に反応する」段階とした。第2次は「筆者の発想(=考えや表現意図)を探る」ことと「(筆者の発想の表れである)文章の内容や形式に対する自分の考えをもつ」ことの二つの学習活動を置く段階とし、第3次は「筆者の発想、主張に対する自分の考え・意見をつくる」ことと「筆者の発想、主張をもとに自分の発想を広げる」ことの二つの学習活動を設定し第2次で行った批判的読みをまとめ、活用し発展させていく段階であるとした。さらにはこの基本的な学習指導過程モデルの観点に基づいて、長崎(2008,2014)、河野(2017)に所収されている批判的読みの先行実践を対象に、具体的な学習指導過程を検討した。これらの考察によって仮設した学習指導過程モデルには、学習指導過程の各段階における批判的読みの学習活動のあり方を意識できること、学習指導過程モデルを指標として既に設定された(されつつある)批判的読みの学習指導過程としての特質、充足度を点検することが可能であること等、具体的な批判的読みの学習指導過程を開発する作業に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次の研究内容として想定していた説明的文章の批判的読みの授業づくりに資するテクスト分析及び学習活動開発の観点の構造を理論的に再整理することや、それらの研究成果に基づいて「説明的文章の批判的読みの実践モデル」としての「説明的文章の批判的読みの基本的な学習指導過程」モデルを開発・仮設することができた。また並行して進める予定であった研究協力校における学習指導過程モデルに基づく実践検証を進め、成果を図の内容の改善・精緻化に還元することができた。ただし、実践検証の事例数がまだ不十分なことと、検証方法のあり方については改善の余地があることが認められ、今後の課題として浮上した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は発達、系統の観点、批判的読みに関する指導者、学習者の習熟度の観点から、開発・仮設した学習指導過程モデルの活用可能性を具体的な教材と授業レベルで検証することである。さらに、そうした取り組みによって学習指導過程モデルの内容の改善を行うことである。すなわち研究の重点を単元及び1単位時間の学習指導過程のあり方と、具体的で有効な手立ての組織化にシフトし、学習指導過程モデルの精緻化と実践における活用の可能性を探究する。そのために1年次に続き、学校現場における研究協力者に研究授業の実施を依頼するとともに、教材分析、授業開発、実践の省察等を共同して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力校における実践検証に際してのデータ収集及び整理が質・量ともにじゅうぶんになされていない側面があった。それに関わる旅費、機器の整備や人件費等に厚く充当していく予定である。
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