研究課題
本研究期間において、記述問題に対する調査対象者の回答を分析し、共同研究者でその評価を行っていった。その結果、論理に関わる記述回答については、同じ領域の研究者であっても、妥当性の評価について、共通性と相違性があることがわかった。評価についてはそれぞれの研究者の信念に由来すると考え、2020年度においては、セルフスタディの手法を使い、記述回答の評定についてのそれぞれの研究者の理由を克明に記述してもらい、その記述を分析した。その結果、論述の回答の評価は、各評価者が持つ、論理についての信念カテゴリーの組み合わせ・重み付けの違いであることがわかった。しかし、論理についての信念カテゴリーについては、同じ領域の研究者全てに共通する信念カテゴリーを発見することはできなかった。このことから、本研究の成果として言えることは、論理(の妥当性の評価)について、当該領域の研究者間でも意見が様々にあることは、論理に関わる複数の信念カテゴリーに関与しており、それらが完全には一致していない(互いに共通することもあれば異なることもある)ことによることが明らかになったことである。ここから、論理の教育に関わる際は、論理に関する認識を研究者や実践者が一致することを求めるよりも、「論理のどの部分に関して、研究/実践しようとしているかについての一致」を行うことにより、明確な研究や実践ができることが示唆される。なお、今回見いだされた論理に関わる信念カテゴリーは、「読者」に関わるもの、「筆者」に関わるもの、「実感」「自分ごと」に関わるもの、「言語」「文量」など言語形式に関わるもの、「理由」「根拠付け」など論証形式に拘るもの、などがある。各研究者は、これらの信念カテゴリーのいずれかを組合わせて重視している。
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福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻年報
巻: 11 ページ: 1-14
言語表現研究
巻: 37 ページ: 1-12
語学文学
巻: 59 ページ: 45-57