研究課題/領域番号 |
18K02631
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
川嵜 道広 大分大学, 教育学部, 教授 (80169705)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 図形概念 / 図形認識 / 認識論的研究 / ルーブリック / 図形指導 / パフォーマンス評価 / 授業改善 / 開発研究 |
研究実績の概要 |
本研究は,図形概念や図形認識,図形指導に関する一連の研究に継続した研究であり,既に得られている様々な知見(図形概念の特質,図形認識の特質,図形授業の特質,図形能力の特質)に基づいて,より具体的に,直接的に研究の成果を図形指導に反映させようとするものである。本研究の目的は,図形指導において育成すべき図形認識の指標となるルーブリックを開発し,授業改革することで,旧態依然とした図形指導を改善し,活性化することである。ルーブリックの開発研究は,パフォーマンス評価を可能とするために,図形指導において育成すべき資質・能力の解明および達成を可能とする研究である。 平成30年度は,現在の学校数学における図形指導全般を,図形認識の観点から見直し,図形指導の確固とした目標を実現するために必要な指導の在り方の検討を行った。図形指導において,図形概念のイメージ化に大きな課題があるため,理念化から客観化への過程で,図の見方に配慮した指導が欠かせないことを確認した。 令和元年度は,学校数学における図形指導過程を,図形概念の言語的側面(用語や定義,性質)と視覚的側面(図やそのイメージ)の認識の観点から見直した。図形指導過程において,言語的表現に図やイメージを適切に対応付けられない場合や,言語的表現を忘れてイメージのみで図形の判断をしてしまう場合がある。図形概念の言語的側面と視覚的側面が連動せず,相互に関連した認識を形成できないことが,図形指導過程における大きな問題点であることを再確認した。 令和2年度は,図形概念の視覚的側面と言語的側面に着目した評価規準を策定し,2側面の相互関係を解明することで,ルーブリックの評価指標の枠組みとなる評価水準を設定した。 令和3年度は,昨年度設定した評価水準に基づいて,図形指導において育成すべき資質・能力の具体的な姿を配置することで,ルーブリックの原案を策定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 令和3年度は,昨年度設定した評価水準に基づいて,図形指導において育成すべき資質・能力の具体的な姿を配置することで,ルーブリックの原案を策定した。評価規準及び評価水準に基づいて評価基準を作成し,基本的な子どもの活動を評価基準に対応づけるという作業を行うことで,パフォーマンス評価が可能な状態にまで評価指標を設定することができた。 本研究は,子どもの図形概念の認識過程を,視覚的能力と言語的能力の側面から捉えることで,学習の成果を子どもの授業中の姿から評価可能にすることを目的としている。視覚的能力とは,視覚的に図形を認識する能力のことであり,ものを見て図形を判断したり,図を通して図形の性質を考えたりする能力である。言語的能力とは,言語的に図形を認識する能力のことであり,図形の名称や性質,定義の理解にかかわる能力である。図形領域のすべての指導内容を2つの図形認識能力に分類し,ルーブリックとして設定し,活用することで,本研究の目的が達成できると考えている。 令和3年度までに,パフォーマンス評価が可能な評価指標の原案を策定することはできたが,その妥当性や有効性の検証ができていないために,研究計画より若干遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,令和3年度に策定した評価指標の原案の妥当性や有効性を検証する。具体的には,小・中学校の各学年における子どもの様子を観察し,原案として策定したルーブリックを用いてパフォーマンス評価を実施し,評価基準の妥当性と有効性を検証する。また,視覚的能力と言語的能力の側面から,学校数学全般における子どもの図形認識の状況および図形概念の形成過程を反省し,最終的には,パフォーマンス評価の観点から,現在の図形指導の改善に向けた提言を行いたい。
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