研究課題/領域番号 |
18K02635
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
丸山 真司 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10157414)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 体育カリキュラム研究 / スクール・ベースト・アプローチ / カリキュラム評価 / ナショナル・カリキュラム / カリキュラムづくり / ライフヒストリー・アプローチ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、体育教師がカリキュラム開発に向かう際にカリキュラムをどのように評価し、またその評価結果をカリキュラム開発や授業実践にどのように活用すべきかというカリキュラムの評価方法をスクール・ベースト・アプローチによって明らかにすることである。 今年度は科研の3年目(科研期間は4年)である。本来であれば今年度の課題は、①学校体育の「単元-年間計画-カリキュラム」アセスメントのアクション・リサーチによる事例分析、②日本-ドイツ-ペルーの比較事例研究、③実践観察のためのカリキュラム・アセスメントの対象と観点、手続きの抽出を進めることであった。以下が本研究に関わる今年度の研究実績となる。 まず第1に、体育科教育学会編の『体育科教育学研究ハンドブック』(大修館書店,2021年3月)において戦後の学校体育の教育課程・カリキュラム研究の動向と代表的な事例を考察した。第2に、上記②の研究課題に関わって、ペルーにおける学校体育ナショナル・カリキュラムの教科内容編成を分析し評価した(「日本教科教育学会誌」(久我アレキサンデルと共著,第43巻第1号,pp.1-11,2020年6月発行)。第3に、上記①の研究課題に関わって、優れた体育実践を創出してきた小学校教諭S氏を事例として取り上げ、ライフヒストリー・アプローチによって体育教師のカリキュラムづくりに向かう「実践的認識」の形成-変容プロセスを明らかにした(「愛知県立大学教育福祉学部論集」第69号,pp.57-67)。 今年度は新型コロナ感染症の世界的蔓延により、予定していた国内及び海外での調査研究(ドイツとペルーの事例研究)ができない状況となり、またカリキュラム・アセスメントの構成要素と手続きを抽出する研究も遅延してしまい、次年度の課題として残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は愛知県立大学の副学長職の3年目となり、学長の補佐業務、第3期中期計画の実行、国際戦略室長および当大学の周年記念事業実行委員長としての業務、2月以降は新型コロナウイルス感染症対策業務に加え、学部及び大学院(修士および博士後期課程)の研究指導、学会役員等の仕事に忙殺され、研究活動を遂行する時間的余裕がなかった。そのため、研究活動全体に遅延が生じ、今年度の目標としていた課題を十分に達成できなかった。 今年度は昨年度の研究課題の継続として①学校体育の「単元-年間計画-カリキュラム」アセスメントのアクション・リサーチによる事例分析と、②スポーツ教育先進国のドイツと学校体育発展途上国のペルーの分析を進め、③実践観察のためのカリキュラム・アセスメント手続きの抽出を試みる予定であった。 ①の研究課題に関わっては、優れた体育実践を継続的に積み上げてきた熟練体育教師(小学校教諭S氏)を取り上げ、彼がこれまでの体育の実践づくりの中でどのような授業やカリキュラムに関わる経験をし、その中でカリキュラムづくりに向かう「実践的認識」がどのように形成―変容されてきたのか、その特徴や要因、プロセスを明らかにした。②の研究に関わっては、ペルーの学校体育のナショナル・カリキュラムにおける教科内容編成の特徴と課題を明らかにした。しかしながら、ペルーの体育教師が現場サイドからこのナショナル・カリキュラムをどのように評価しているのかの分析については課題として残され、現在その調査研究に着手している。ドイツのカリキュラム評価についての調査研究については、新型コロナウイルス感染症の影響でドイツに渡航することができず、この研究も積み残された課題となっている。③の研究課題については、まだ着手できていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度が本研究の最終年度となる予定である。これまで大学の役職業務や新型コロナ感染症の影響により研究はかなり遅れている。そのような状況を踏まえて、2021年度にはこれまでの研究成果と課題をまとめながら、実践観察のためのカリキュラム評価チェックリストを開発し、学校体育の新たなカリキュラム評価方法モデルを創出しなければならない。 そのためにまず第1に、優れたカリキュラム実践を展開した体育教師の実践記録分析を通して教師のカリキュラム評価に対する意識や実践的認識の形成-変容プロセスを解明した研究を手がかりに、「授業(単元)-年間計画-カリキュラム」をつなぐ内実の評価を分析して、実践観察のためのカリキュラム・アセスメントの対象と観点、手続きを抽出する研究を進める。 第2に、ペルーの学校体育のナショナル・カリキュラムにおける教科内容編成の特徴と課題を明らかにした研究をベースに、さらにドイツの体育教師によるスポーツ指導要領の評価研究に依拠しながら、ペルーの体育教師が実践を基盤にしてナショナル・カリキュラムをどのように評価しているのかについて分析し、その研究を実践観察のための国際指標となりうるカリキュラム評価チェックリストの開発につなげる。新型コロナ感染症が収束し、海外渡航が可能になったならば、ドイツ、ペルーの現地での調査研究を合わせて実施したいと考えている。 そして最後に、これまでの研究を束ねて、学校体育における教師によるカリキュラム評価方法を実践的・理論的に解明し、実践現場に活きるカリキュラム評価方法モデルを構築するつもりである。 新型コロナ感染症の状況によっては、1年間研究期間を伸ばす必要が生じることも視野に入れておきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は副学長(総括)職の3年目であった。今年度は副学長(総括)として学長を補佐すると同時に、2020年4月に設置された国際戦略室の室長を兼務することとなった。新たに国際戦略室長として、本学の国際戦略方針や「アクスション・プラン」の策定、ブラジルやウズベキスタンとの連携強化、新たな学術交流協定の促進等の業務に追われた。また今年度が本学の移転20周年記念の年に当たり、周年記念事業の委員長として周年記念プロジェクトやシンポジウムの実施、記念誌の発行、記念動画の作成等に従事した。さらに、新型コロナ感染症蔓延状況の中で、大学のコロナ対策室副室長としてコロナ対応の業務に追われた。 以上、副学長職として大学の管理運営業務に多くの時間が割かれ、研究が十分に進められなかったことと同時に、新型コロナ感染症の影響により国内及び国外での調査研究や学会発表等ができず、予算計上していた旅費が全く使用できなかったため、今年度の予算を余すこととなった。 次年度の使用計画として、新型コロナウイルス感染症が収まれば、国内の学会及び研究会への発表や参加、国外での調査研究(とりわけドイツ)を実施したいと考えている。
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