本研究の目的は、学習者との心的距離が近く、且つ成長のモデルとなる物語等を用いて多読用教材を編み、高校・高専現場に発信することで「古典ばなれ」対策に資することにある。具体的には、突発する天災・人災の中で逞しく生きる子ども像、即ち〈厄災を乗り越える子ども物語〉を、活字化されていない新資料も含め、様々な時代から集成し、一部日記や漢文記録を加えた短篇集形式のサイドリーダーを編むことで、上記、研究目的への到達を試みるものであった。 研究の最終年度となる2021(H33・R3)年度は、2018(H30)年度から蓄積してきた成果の検証と教材の編集を主に行い、広く公開できるよう作業を進めた。既存教材に掲載されにくい作品が多いため、編集作業においては、教材としての適否を教育学的に再検証しつつ、また、新資料の掲載にも努めた。教材は、当初計画から一部変更し、現場の指導者が目的に応じて使い分けできる冊子版・冊子データ版を準備した。なお、本年度末に、本研究全体の具体的成果を最終報告書として纏めた。 研究期間全体を通じ、教材のキーワードを〈厄災を乗り越える子ども物語〉とし、奈良~室町期成立の物語などから、天災・人災を問わず、〈厄災〉の中で逞しく生きる子ども像を抽出した教材の編集を進めた。教材化に際しては、臨床教育学の手法に基づき、国語科教育における有効性を多角的に検証した上で、「テキスト」・「注釈」・「指導案の例」として取り纏めた。
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