研究課題/領域番号 |
18K02644
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
原田 大介 関西学院大学, 教育学部, 准教授 (20584692)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 国語科教育 / インクルーシブ教育 / 授業研究 / カリキュラム開発 / 初等教育 / 発達障害 / 深い学び / 目標論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、通常の学級に在籍する発達障害のある児童を含むすべての児童に必要な「ことば」の育ちや学びのあり方を検証し、インクルーシブ教育システムの実現を見通した国語科授業の理論と実践の構築に向けて、新たな小学校国語科授業カリキュラムを開発することにある。 2018年度では、小学校国語科授業カリキュラムの開発に向けて、そのカリキュラムの基本原理を見出すことを主な目的とし、「深い学び」という観点から研究をすすめた。 2019年度では、小学校学習指導要領国語編が告示された2017年以降の目標論をめぐる議論を整理・考察することにより、カリキュラムの基本原理について検証した。 2017年以降の国語科をめぐる議論は、①大学入学共通テストの是非、②学習指導要領の改訂の是非、③高等学校の教科「国語」の科目編成の是非、④国語科教育の目標について、の4点に整理できた。さらに、2017年以降の国語科の目標をめぐる議論においては、二つの視座として、1.学習者の多様な身体・生活背景を踏まえた国語科教育と、2.自己と他者とのあいだに生まれる権力関係や、社会的な権力構造について学ぶ国語科教育を確認できた。国語科教育を実践する教員は、自国中心的な言語文化の学びにならないように細心の注意を払う必要があること、ならびに、国語科は学習者の多様性を包摂し、権力関係や権力構造について学ぶ教科として期待されていることが明らかとなった。 また、学習者が多様性や権力関係/権力構造を学ぶ上で、文学、論理、古典、漢文、等々のその細部において、教材の何が、どのようにして学習者の「ことばの学び」を支えているのか/支えていないのか、が問われなくてはならないこと、特に文学においては、その大きな特徴である虚構性(フィクション)の重要性は無視することができないことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、インクルーシブ教育の理論や実践、ならびに国語科教育、特別支援教育、社会学、心理学、哲学、言語学等の国内外の文献を収集し、カリキュラムの基本原理について検証した。 これを踏まえて、2019年度の目的は、国語科教育のカリキュラムの基本原理について、小学校学習指導要領国語編が告示された2017年以降に議論されている目標論の観点から検証することにあった。基礎研究の2年目として、計画通りに進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、主に国語科の目標論の観点から、小学校国語科授業のカリキュラム開発について検証した。今後の研究の推進方策として、主に2点あげられる。 1点目は、学習者の多様な身体・生活背景を踏まえた国語科教育の目標、内容、方法、評価等のあり方を精緻化させることと、自己と他者とのあいだに生まれる権力関係や、社会的な権力構造について学ぶ国語科授業を具体化し、検証することにある。特に後者においては、授業をデザインする教員に求められる力量形成の観点からも検討する必要がある。 2点目は、2017年版の小・中学校と2018年版の高等学校の学習指導要領国語編を、権力関係・権力構造をめぐる学びの視座から再検討する必要がある。加えて、権力関係・権力構造といった考え方を学習者が学ぶ場合に、学習者の発達段階に応じたカリキュラム・授業案を国語科の教科書教材と合わせて(いわゆる定番教材と呼ばれているものも含めて)構想しなければならない。
|