研究課題/領域番号 |
18K02650
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中村 好則 岩手大学, 教育学部, 准教授 (00613522)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高校数学 / 特別支援 / ICT活用 / 指導モデル / 数学困難 |
研究実績の概要 |
今年度は,高等学校に在籍する数学学習に支援が必要な生徒の困難性を改善するための指導モデルを以下の方法により開発した。
(1)昨年度実施した高等学校を対象とした数学学習に支援が必要な生徒に関する質問紙調査及び訪問調査の結果を基に,開発協力校を選定し,指導モデル開発のための実践及び研究の協力を依頼した。また,昨年度に課題となった数学学習に支援が必要な生徒のメタ認知を調査するための基礎学力調査と質問紙調査を作成し開発協力校に依頼・実施し,その分析結果を基に数学学習に支援が必要な生徒のメタ認知の現状と課題を明らかにした。その結果を指導モデルの開発に活用した。
(2)指導モデルの開発においては,①指導モデルの作成(Plan),②開発協力校での授業実践(Do),③授業のビデオ分析による評価(Check),④指導モデルの改善(Action)のPDCAサイクルを繰り返して行った。指導モデルは,(a)困難性の改善状況に応じた支援が選択可能になるように困難性の改善状況の把握の方法,(b)困難性の体系化をもとに,各困難性の関連を考慮した支援,(c)多層指導モデルを参考にした,多数の生徒に見られる困難性(第1層),少数の生徒に見られる困難性(第2層),特定の生徒に見られる困難性(第3層)に対する多層的な支援,(d)指導の評価の方法,(e)ICTの活用の5点を検討し開発を行った。また,数学に関する側面(数学的な意味や概念,数学的な見方や考え方,数学的活動など)と学習者に関する側面(認知特性,方略の選択的採用,動機づけ,ワーキングメモリー,メタ認知など)にも留意し,指導モデルの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究成果を基に開発協力校を選定し,数学学習に支援が必要な生徒の困難性を改善するための指導モデルをPDACサイクルによって開発することができた。また,昨年度課題となった数学学習に支援が必要な生徒のメタ認知の現状と課題についても調査分析を行い,その状況を把握し,指導モデルの開発に活用することができた。さらに,開発した指導モデルを基に,高校数学Ⅰを題材にした指導事例を提案し,開発協力校において指導実践を行い,効果と課題を検討することができた。指導モデルの開発では,ジグソー法によるアクティブラーニング,図形パズルを題材にした操作的な指導,具体物による実験による指導,シミュレーションを活用した視覚的な指導などを検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した指導モデルの有効性の検証を実践協力校での授業研究により行う。 授業研究は,(a)対象生徒とクラスの選定,(b)対象生徒の困難性の実態調査,(c)指導目標の設定,(d)支援の検討,(e)指導モデルの具体化,(f)指導モデルの実施,(g)評価からなる。それらを,事前検討会,研究授業,事後検討会で検討する。対象生徒と対象クラスに対して1つのサイクルを約1か月(1単元)で実施する。(g)評価は,ビデオによる授業記録,ノート記録,ワークシート,振り返りシート,インタビュー調査等を用いて行う。これらにより,各指導場面での有効性をより具体的に検証が可能になる。
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