研究課題/領域番号 |
18K02652
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
鈴木 庸裕 日本福祉大学, 子ども発達学部, 教授 (70226538)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学校福祉 / 学校ソーシャルワーク / 家庭支援 / 多職種連携 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校(学級)経営や生徒指導、教育相談において、教師(教育職)自らがソーシャルワークの援助技術を包括的横断的に活かしていく実践技法の可視化と手順を明らかにすることにある。2019年度はおもにアンケート調査と聞き取り調査をもとに、教育職と福祉職との実践技術の共通点を明らかにした。子どもの貧困問題やネグレクト、不登校(長期欠席)、発達障害といった困難ケースに対し、教師が福祉職(スクールソーシャルワーカーなど)との協働から培う力量や資質がある。今回の調査では、そこでの力量や資質として実践や技法をめぐる共通課題に、例えば家庭との連携方法(相談援助技術)にあることがわかった。 ソーシャルワークの援助技術は教師にとって新規で外的な知識や技術ではない。そのことを明示化することに一定の視点が明らかになった。特に2019年度は、いじめ防止対策と虐待対応の事例や課題を中心に、ケース収集とケース会議や研究協議への参加を通じて、教育職と福祉職との実際的な接合を掘り下げることができた。そのなかで、教師によるソーシャルワークの実務理解とは、福祉職による学校理解よりも敷居が低い傾向にある。そして単に、方法技術のスキルアップではなく、学校教育や子ども理解の中で使われる用語を社会福祉の用語で示していくことにある。おなじ事象を見ても、それを示す用語のちがいが浮き彫りになった。教師と福祉職が協働する独自な実践領域やその学際的概念の開発が求められる。こうした視点を活かしたガイドラインの作成に意味があることも明らかになった。 なお、2019年の研究成果(ガイドライン、ガイドブック)はスクールソーシャルワーカー現任者への人材育成にも活用し、また教員向けの現職教育を通じて研究協力学校から評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貧困やネグレクトなどの多問題家庭への訪問技術や関係機関との調整機能の活性化、いじめ防止対策などの予防・調査・初期対応、そして事後指導などについての資料収集や討議など、本研究を進めるにあたり、これらに関する聴き取り調査が順調に進んでいることがおおむね順調に進展という結果と結びついていると思われる。 スクールソーシャルワーカーのみならず、各学校の学校管理者、生徒指導や教育相談の主任、養護教諭、学級担任、スクールカウンセラーからの聞き取りは困難が多い。しかし、近年の「チームとしての学校論」時代の情勢も進捗に影響を与えていると思われる。本研究への理解が学校関係者にあり、研究成果としてのガイドライン(ガイドブック)が学校内での議論と重なっていることにもある。 スクールソーシャルワーカーなどの外部人材と教職員が、チームをつくる上で、どのような役割を相互に理解するべきかが課題となる。その際、教育関係者と福祉関係者がともに、多職種連携の思考を深めていくことが必要である。このチームは、教師の同僚性とは異なり、教育、福祉、心理などの多職種による協働を示すものである。チーム学校をめぐるスキルアップは、学校内での事象をめぐる課題と子どもの家庭への支援や学外の機関連携とを結びつけるものとして、福祉職が担う役割を教師が理解するプログラムと重なる。その際、学校での生徒指導や教育相談活動において、多職種連携とは事後対応を担うのではなく、複数の職種が相互に、さまざまな予防的な環境を創造するスキルや知識を持つことという視点である。その点が本研究から導きだせた大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
この研究においては大きな教育課題として、いじめ防止対策やその調査委員会活動、児童虐待をめぐる学校関係者のあり方や多職種連携に数多く応対している。さらに、児童虐待をめぐる教育委員会への対応なども多く、本研究の成果の般化が急がれると感じている。 今後の研究では、多職種連携に関する実践ツールとしてのプログラムのさらなる検証が必要となる。昨今のコロナ禍による学校状況(学校休業など)には、こうした研究テーマが欠かせない。本研究においてこれまでソーシャルワークの方法技術研究等で試行的に作成してきた援助技法のマニュアル、ツール、校内研修用教材(例えば「多問題家庭への訪問技術や関係機関との調整機能の活性化」、「学校の地域ネットワークの形成」など)を、こうした社会状況の中で活かせるようにしていきたい。その際、学校の多忙化に配慮して、実践協力校でのガイドライン活用をめぐるそのモニタリングの精度を高めていく予定である。 今後、2020年度は、各学校の動向や実践を一定管理的に対応する教育委員会の指導主事や生徒指導アドバイザーなどの意見を参考にし、本研究の課題追求を果たしていく。また、2020年度は、最終年度でもあり、これまでの『ハンドブック』の活用結果をとりまとめた報告書(電子媒体化を含む)の作成がある。 研究成果の報告は、日本学校ソーシャルワーク学会や日本教師教育学会での報告、および出版などによる成果発表などに取り組んでいく。さらに、雑誌『月刊生徒指導』などへの掲載などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張中止となったため、次年度に利用する。
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