本研究の目的は,体育授業の中でよりよい意思決定を行うために必要な事前計画立案の視点と事前計画作成のプロセスを提案し,教員養成課程の授業において活用する方法論を提示することであった。コロナ禍の影響もあり,当初計画していたアクションリサーチ型の研究計画を変更し,教員の事前計画立案に対する意識を明らかにすることに加え,それを支える学習観にも着目してきた。 具体的には,2021年度において,既に実施してきた教師の事前計画立案に対する認識調査の妥当性を高めるために,質問紙を精査し約400名の小学校教師を対象に調査を実施した。その結果,多くの教師は,事前計画の認識として「授業の具体的イメージ」を重視していること明らかとなった。また,中堅期教師はベテラン期教師よりも綿密に計画を立てることが大切であると認識していることが明らかとなった。つまり,中堅期までは「授業の具体的なイメージ」を得るために綿密な事前計画を立てる傾向があり,それを経たベテラン期になり,計画から離れる思考など,文脈に応じた即興的な思考が可能になるものと考えられる。 また,事前計画を立案する教師の学習観形成が,学習指導要領の改訂によってどのような影響を受けるのか,ということを明らかにするために質的研究を実施した。9名の熟練教師を対象にインタビュー調査から得られたデータを分析した結果,「意味ある他者」からの「後押し」を受けて学習観が強固になることや,新しいことを受け入れる際に「葛藤」などを経て学習観を変化させていくことが明らかとなった。これら既有の学習観と事前計画立案の関連を検討することが今後の課題となっている。
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