研究課題/領域番号 |
18K02656
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
河村 美穂 埼玉大学, 教育学部, 教授 (00361395)
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研究分担者 |
伊藤 葉子 千葉大学, 教育学部, 教授 (30282437)
清水 理子 (片平理子) 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (70204427)
嶋口 裕基 名城大学, その他部局等, 准教授 (80631936)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食教育 / フードリテラシー / 食教育カリキュラム / タイの家庭科教育 / シンガポールの教育 |
研究実績の概要 |
本研究は日本の家庭科教育における食教育の独自性をエビデンスベースで明らかにするものである。日本の食教育の独自性を明らかにするにあたって、シンガポール、タイ、デンマーク、イングランド各国のカリキュラム、教科書、実際の授業の様子を比較検討することとした。比較の視点としてフードリテラシーという概念を用い、歴史的に蓄積のある日本の食教育の特徴を明らかにすることとした。 2018年度は、シンガポール、タイとの比較を行った。シンガポールは家庭科の学習内容として食生活分野と消費分野のみからなり(「食と消費教育」)、数少ない私立学校を除く公立の中学校では必修科目として設定されている。シンガポールの生徒は小学校卒業段階の統一試験により能力別の3コース(Express, Normal Academic, Normal Technical)に振り分けられるため、各コースの生徒が用いる教科書にも若干の違いがあるものの、「食と消費教育」の学習内容は同様である。シンガポール政府の検定をへた「食と消費教育」の教科書はExpress コースとNormal Academic コース用のもの、Normal Technicalコース用のもの、という2種類がある。これらと日本の検定済み教科書・中学校技術・家庭科、家庭科分野の教科書3冊(3社)の食生活分野を比較検討した。 シンガポールのナショナルカリキュラムには、日本の学習内容にはないDiet related Diseaseがあること、調理に関する内容が多いこと、その一方で社会的、文化的学習内容は設定されていなことが明らかになった。このことは、教科書の比較検討でも同様に示され、調理実習の掲載ページ割合(食生活分野中の割合)が多いこと、社会的文化的視点のある内容は少ないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度当初計画の通り、シンガポール、タイの家庭科教育における食教育の資料収集、現地観察調査を行った。収集資料は、各国の学習指導要領(英語版)および中学校で使用されている教科書(シンガポール:英語、1社2種類・コースに対応)(タイ:タイ語、1社3分冊)である。タイの教科書に関しては今後タイの研究協力者から、さらに5冊入手の予定である。また2018年度末にタイ語から英語への翻訳についてタイ語学科学生に依頼可能となったため、2019年度当初に実施する。 これらの資料の収集と並行してシンガポールとタイへの現地調査を実施した。2018年8月にはシンガポールの二つの中学校(Seng Kang Secondary School ,Nanyang Girls Secondary School)を訪問し調理実習と栄養教育の授業の様子を観察した。さらに2019年1月にタイの4つの中学校(Satitkaset Demonstration School、Triamudomsuksapattanakarn Rachada School、Satriwitthaya School、Bodindecha (Sing Singhaseni) School)を訪問し、調理実習と食に関するワーク型の授業を観察した。すでにシンガポールと日本との比較については学習指導要領、教科書において行っている。タイとの比較については、カリキュラムを検討しており、先述した通りタイの家庭科の教科書の英訳を進めるところであり、今後比較する。 これらの研究とは別に、2018年度には研究分担者がフードリテラシーの先行研究についてのレビューを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、フードリテラシーについての概念整理を行い、各国のナショナルカリキュラムの比較を行う。さらにシンガポール、タイの教科書については詳細な分析を行い、各国の食教育において、どのようなフードリテラシーを育もうとしているのかを検討する。 特にタイの教科書については、タイ語から英語への翻訳が2019年度前半には入手できることから、同時期に日本語教科書の英語訳をすすめ、両者を比較検討し、タイの研究協力者とともに議論して相違点を明らかにする。 さらに、デンマークの食の必修科目であるフードナレッジ、イングランドの食生活教育を包含する必修科目フードアンドテクノロジーについてもナショナルカリキュラム上の位置づけを検討するとともに内容を精査し、2019年後半~2020年前半に現地調査を行う計画を立てる。主として中学校(中等学校)における食生活教育の授業見学と教科書等資料の収集を目的とする。 なお、2019年8月に開催される国際家政学会アジア地区大会(中国・杭州)ではシンガポールと日本の食生活教育の比較内容についてポスター発表を行う予定であり、2020年8月に開催予定の国際家政学会2020(米国・アトランタ)への発表(フードリテラシー育成の観点から見る各国食生活教育カリキュラム)の準備も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に計上していたタイ語家庭科教科書の翻訳代金が2019年度に支払うこととなった。それにともなって資料整理の謝金の使用も、2019年度に繰り越しとなった。 主として、タイ語という特殊な言語であることから翻訳者の選定に時間がかかり、翻訳の発注が2019年3月となってしまったことが要因である。なお翻訳した教科書は2019年6月に納品の予定である。
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