最終年度は,前年度に引き続き,千葉県の人口減少地域における学校統廃合問題を扱った地域学習のあり方を検討した。本研究では,これまで農村地域が抱える学校統廃合問題をその当事者である子どもたちが学ぶ視点として,①学校統廃合が実施される社会的な背景を,地域の抱える問題(地域問題)の分析を通して解明していくこと,②学校統廃合が決定するまでの過程と統合に向けた地域の取り組みについて丁寧に学ぶことという2つを設定し,実践を通してその有効性を検証してきた。 しかしながら,①学校統廃合問題を社会科とりわけ地理的分野のカリキュラムの中でどのように位置づけ,実践すれば良いのか,②学習を通して子どもたちが獲得した学校統廃合問題に対する認識や意識の実態はどのようなものであったのかといった点が,課題として残った。そこで,本年度は,千葉県横芝光町立光中学校の椎名彩香実践(地理的分野「関東地方」単元および総合的な学習の時間)を事例として,残されたこの二つの課題に迫った。その結果,椎名実践が試みた総合的な学習の時間と連携した地域問題の継続的な学習を通して,生徒たちは自分たちが生活する横芝光町に関する認識を深め,住民の一人としての意識を高めていった。こうした学習を支えたのは,地域を相対化して認識する視点とさまざまな体験を通した地域の人々との交流であった。 本研究では,本年度までの研究成果を踏まえて,①授業実践を通して農村地域における次世代を担う人材を育成することを射程に入れた地域学習の授業づくりの視点を導出し,さらに,②そのような授業実践を可能にするために,地域学習を軸とした社会科・地理教育カリキュラムを具体的に提案した。
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