研究課題/領域番号 |
18K02668
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山元 隆春 広島大学, 教育学研究科, 教授 (90210533)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 学習評価法 / 読むこと / カンファランス / 読者反応 |
研究実績の概要 |
本研究は、わが国児童生徒の理解力育成のために、国語科において読むことの「深い学び」を促す学習評価法の開発を目的としている。文学作品をはじめとした文章のもつ「深い学び」を引き出す可能性を掘り下げ、読者反応の質をどのようなかたちで意味づけていけば,一人ひとりの学習者の深い理解を導くことができるのかということの解明を目指す研究である。 本年度は、研究実施計画記載の「(1)読むことの学習における「深い学び」とはどのような学びかということを,作品や文章に対する読者反応の量的・質的分析を通して明らかにする」という課題に、従来の先行研究においてこの問題の解明に取り組んでいる米国のJenifer SerravalloのUnderstanding Texts and Readers(2018)等を取り上げ考察しつつ取り組んだ。Serravalloは米国における読むことの本や文章のレベル分けの内実を検討し、また学童期から思春期にかけての読者の特徴を分析しながら、次のような見解を明らかにした。「理解は固定されておらず、多くの要因による」「生徒が読める本や文章のレベルは、多くの変数によって定まる」「本や文章のレベル分けに完全なものはない」「本と読者のマッチングは思いのほか簡単ではない」「ひとつの評価ですべてがわかるわけではない」「読者として発達させるためには、反応を見ながらの柔軟な指導(responsive instruction)が大切だ」といったことを明らかにしている。そのうえで、読むことの深い学びを導く学習評価法としての「カンファランス(conference)」の重要性を指摘し、理解指導の内容と方法についての提言を行っている。「作品や文章に対する読者反応の量的・質的分析」に基づいた評価法開発の立脚点が得られたと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的、研究実施計画に従いながら、本研究課題に取り組む上での基礎的な作業を進めることができた。とくにこの研究課題について国際的な評価を得ているJenifer Serravalloの最新の著作をもとにして、今後の研究推進についての足場を築くことができている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の研究実施計画に沿いながら研究を進めていきた。とくに「(2)(1)の分析をもとにして,作品や文章に対する学習者の積極的な関与を導く指導法を明らかにする」という課題に取り組む。本年度研究の対象としたSerravalloの著作にも「学習者の積極的な関与を導く指導法」について多くの示唆があったので、それを日本の学校国語科で扱われるフィクション作品に適用しながら、課題と改善点を明らかにしていきたい。
|